[35]

話し終わる頃には休み時間も終わり5時間目の開始のチャイムが鳴ってしまった
結局今更急ぐ気にもなれずにサボるつもりでごろんと床に寝転がる
「それで朝は高里と追いかけっこしていたわけか」
納得したようにそういう圭介に頷き返して
「まぁ、おかげで勉強は捗ってるんだけどさ・・・それ以上に楓と聡広のことが気になって気になって・・・」
コレが一番問題だ
物事を忘れたい一心で勉強に打ち込むことは前にもあったし、その結果今この学校に入っているようなものなので逃げ道としてはいいことだが、だからと言って、いつまでも聡広達から逃げ続けるわけにもいかない
「簡単なことじゃん。高林先生に『俺意外と仲良くしないで』って言えば済む事だろ?」
さも当然のことのようにそういう圭介を軽く睨んで
「そんな恥ずかしいこと言えるわけが無いじゃん!あぁ、もう。大体言えたらとっくに言ってるよ!」
言えないからこその悩みを何故理解してくれないんだろう
「本命には健気なわけか。お前、夜遊びの相手にはさも当然の権利だと言わんばかりに言ってるくせに」
確かに暇つぶしに相手をしている奴らには簡単に言える
それは俺が相手に執着しているわけじゃなくその場限りだと割り切っているからだ
別にそれが原因ですぐに切り捨てられようが関係ない
大体俺の時間を買ったくせに違う奴と親しくするのはやはり面白くないのだ
「それで嫌われたらどうしようとか・・・面倒くさい奴だと思われないかな?とか色々考えるとやっぱり言えない・・・」
寝返りを打ち圭介が居るほうと反対側を向く
「はぁ・・・全く何でそんなに気弱になるかなー?いつも通りで接してればいいと俺は思うけど?」
ほら、こっち向けと圭介の居る方に無理やり体を向けられる
「美希也はさ、慎重すぎるんだよ。ちょっとは大胆に踏み込んでもいいと思うぜ?じゃないと、高里に奪われるかもよ?」
ちょっと脅しを含めた圭介の言葉に絶対に嫌だと思いながらもその反面、楓みたいに懐いている奴の方が聡広も好きなのかもしれないと色々憶測をしてしまう
段々俯いていく美希也に脅しは逆効果だったと悟った圭介はため息をつきながら
「ほら、いつまでも拗ねてるのは可愛いけど、いい加減なところで気持ちを入れ替えないと自滅するぞ?最悪振られたら俺がお前を攫ってやるから好きにやってみろよ」
「なにそれ」
ちょっとムッとしたが圭介なりの励ましだとちゃんと分かっている
「だからちょっと大胆になってみろってことだよ」
な?と顔を覗き込む
「うぅ・・・頑張ってみる」
どうすればいいとかそういうことは分からないけど、とりあえず今の状態がよくないことだけは分かる
「よし。それじゃあ、頑張れ!それで何かあったらいつでも俺の所に来い」
「はいはい。報告に行きますよ」
例え直接手を貸してくれなかったとしても圭介は話をじっくり聞いてくれる
たったそれだけのことでも今の自分にとってはありがたい存在だった



暫く圭介と戯れながら青空を見上げていたが突然屋上の扉をバンッと大きな音を立てて開く音がした
何事だ?と圭介と顔を見合わせたところで
「浅木!沢田!ココで何をしている!」
と大声で怒鳴られる
ゲッとあからさまに顔に出してそちらを見ると担任と聡広が立っていた




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