[40]

「美希也?」
控えめなノックの音と楓の声がする
「美希也、沢田達が来ているんだけど・・・」
そう言われて彼らが来たことを理解する
ぼーっとしている頭を起こして
「うん。来るって言ってたから知ってる」
と返した
頭が重いのは泣いていたからだけでなく眠ってしまったせいもあるのだろう
鏡で自分の酷い顔を見て苦笑いを浮かべる
目がまだ赤いが出ないわけにいかない
「圭介達は?」
部屋から少し顔を出して廊下を確認すると楓と聡広と圭介とタキが居た
こちらが扉を開けるのを待っていたのだろう
「お前寝てただろ?さっき行くって言ったのに何で寝るかなぁ」
そうぼやく圭介にごめんと謝り、「入って」と扉を大きく開けた
「勝手に入ってきてよかったのに」
圭介に小さくそう声を掛けると
「俺もそうしようと思ったけど高里がしっかり扉を守ってたからさ」
そう言い返された
「あ!このぬいぐるみって俺が美希也にあげたやつだよね?」
部屋のいたる場所にあるぬいぐるみに気づいたのかタキが声を上げる
「そう。捨てたらタキが怒りそうだなって思って全部とってあるよ」
でも、半分くらいは邪魔でマスターの店に置いてきたけれど
「ふーん・・・あ、コレ写真?」
勝手に本棚や机の上の物を手に取り始めるタキに焦って
「タキ!もぅ、ただでさえ汚いから入れたくなかったのに」
文句を言って誤魔化しながらタキが見ていた写真立てを奪い、机の上に伏せた
「それで、何があったんだよ?」
真剣な顔をして切り替えるように圭介がそう訊いてきた
「・・・別に・・・何も無い」
「じゃあ、何で泣いてたんだ?」
更に質問を重ねてくる
「本当に何も無いんだ・・・でも、その・・・楓と聡広が一緒にいるのを見て・・・なんか涙が止まらなくなっちゃって」
そう正直に答えるとため息をつかれた
「今日の昼にも言っただろ?自滅するって」
「本当・・・圭介の言った通りになっちゃった。ストレス発散しようと思ってタキに電話しようとしてた時、二人一緒に帰ってきてさ・・・それ見て、嫉妬でどうしようもなくなっちゃった」
本当に自滅してしまっている
「話がよく分からないけど、美希也・・・もしかして好きな人ができたわけ?」
横からタキがそう訊いてきたので答えようとしたらその前に圭介が
「こいつ、ちょっと前にさっき居た扉の前に居た奴じゃない方と付き合い始めたんだよ」
と説明した
「えっ?あの人確か美希也の学校の先生だよね?」
そういえばタキは聡広と以前会っていて面識がある
タキには話してもいいかと思い聡広と付き合い始めた頃から今までの経緯を簡単に説明した


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