[48]

「は?試験の仕組みを教えて欲しい?」
「そう。補習の仕組みや追試についても」
学校の休み時間に圭介に試験について尋ねた
「別に追試なんか関係ないだろ?」
「ほら、休んだりしたらどうなるのかなー?って思ってさ。0点で強制的に補習とか?」
そう訊くと圭介はまさか休む気か?と疑いの視線を向けてきたが
「欠席した場合は試験終了後の2日後に追試があるよ。あと、50点以下の補習組になったやつも再チャンスとして追試を受けることになってる」
「へぇー、追試で良い点数を取ったら?例えば90点とか」
「追試だから成績では直接反映しないらしいけど、補習は免除になるだろうな。追試は毎日補習を受けるか免れるかの再チャンスなわけだしさ。大体がこの追試で補習から免れてるよ」
だからあまり受けた人がいないのかと納得する
「で、そんなことを訊いてどうするんだ?」
何かを企んでいることはお見通しだと言わんばかりにそう尋ねてくる
「ちょっとねー。どれくらい頑張ろうかなーって思って」
楽しみを見出せないとやる気が出ないのは自分の悪い癖だとちゃんと自覚している
それでもやる気が出せないのだから仕方がない
「こないだも言ったけど、補習を免れるくらい頑張ったら毎日構ってあげるからやる気出せよ」
「圭介が構ってくれてもなぁー」
構って欲しい人は最近少し遠い場所にいるような気がする
「試験で頑張ったら構ってくれるかもしれないぞ?」
「そうだといいけどな」
今朝、あの微妙な空気を作ってしまったから、余計に近づくのが怖いのかもしれない
試すようなことを言った自分が悪いのだけど、でも・・・少し悲しかった
嘘でも、俺のためだとか、圭介のように褒美の約束をしてくれるとか・・・して欲しかった
「楓が羨ましい」
今は俺より楓の方が聡広と近い場所にいるような気がする
「お前らは本当に泥沼だよな」
圭介がそんなことを呟いている
「泥沼ねぇー・・・」
本当にそうだよねーと言うと、圭介からはため息が返ってきた


放課後、図書室へ足を向ける
今日はさすがに居ないかもしれない。けど、少しだけ期待して図書室へ向かった
遠くから自習室を覗くと誰も居なかった
誰も居なかったことに悲しい気持ちと安堵する気持ちが入り混じり複雑な気分なまま自習室の中に入った
自習室に入る前に数冊持ってきた本を机に積んでノートと教科書を取り出す
少しだけ目標・・・と、いうより企みが浮かんだのでその楽しみのために勉強する


全ての行動の基準は単純なんだ
楽しいか楽しくないか。
どうせ同じ時間を過ごすのならば、少しでも楽しいほうがいい。それが俺の基準



← Back   NEXT →

ページ一覧】【一言】【TOP】【HOME

Copyright(C) Shino komanami.All Rights Reserved.