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「で、デートしてもらえないからって不貞腐れてるわけ?」
放課後の教室
残っている生徒は俺と圭介だけ
昼休みの出来事以降、やる気が出なくて始終机に懐いている
「うるさいー!もしかしたら家族に呼ばれて自宅に帰るのかもしれないし…仕方ないよね」
「俺にはそう思い込んで仕方ないと諦めようとしてるようにしか見えないけどな」
「事実だとしても言われたくない」
必死に自己暗示を掛けているというのにそれを邪魔する圭介を少し睨む
「はいはい。そういう顔しても可愛いだけだよ。それより、土日遊ぶか?試験明けだしさ」
「・・・そうだね。圭介とデートしようかなー?一泊二日で」
「は?泊まり?」
予想外だったようで驚く圭介を笑って
「実は聡広を誘うつもりだったんだけど、振られちゃったからどうしようかなーって考えてたんだよねー」
「わ、悪い。泊まりは無理だ。夜7時からちょっと家族と約束があるからさ」
ゴメンと謝る圭介に「そっかー」と軽く項垂れる
皆予定があるらしい。
「残念。じゃあ、日曜日に出かけよう?土曜日は行きたい場所があるからさ」
「あぁ、約束な」


気分は晴れないけれどいつまでも凹んでいたって仕方がない。
「日曜日の圭介との遊びを励みにもう少しだけ頑張ろうかな」
「そうそう、今は試験勉強に専念しとけ」
試験勉強
そこまで必死に頑張る意味は見出せないけど、少しだけ頑張ってみよう
例え、一緒に勉強する楓と聡広の様子を見ているのが辛くても・・・


試験日の当日を迎えてしまえば最終日まではあっという間だった
毎日見ていた楓と聡広もこの前日を含めた3日間は各自で勉強しようということで静かな毎日だった
今日はその試験の最終日
カリカリと鉛筆の音だけが響く教室に本来ならばいるはずだが俺は今違う場所に居る
単純に言うと『サボリ』になるが、今回は公欠だ
祖父の法事
法事なのだから帰って来いと祖母に言われていた為、最初から休むつもりだった
母親は知っているかもしれないが、楓にも圭介にも、勿論聡広にも言っていない
最初から追試を受けるつもりだったと言えば彼らは何て言うだろう?


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