【 教えてやらない 】





「なぁー、今日はどこと喧嘩するのー?」

「は?お前には教えねぇよ」



今日のところは若干柄が悪く心配だからと圭に相手を教えなかった

きっと、これが間違いだったのだろう



「イ、イト!大変なことになったぞ!!」

慌ててコチラに紙を見せるヤエに何事かと思いながら紙を見る

「たしかに大変だ…」

大変というより面倒なことになった



『家出します By:ウィッチ』



お前は小学生か!

思わず叫びたくなったがそうも言っていられない

今日は予告されたチームの喧嘩が控えている

あまり圭に構っても居られない



「仕方ねぇから、ヤエ!お前圭のこと頼んでいいか?」

「は?俺?俺よりイトが探したほうがいいんじゃないか?どこに居そうかとか検討があるだろ?」

そう言われても今日の喧嘩で総長がいないのは相手に示しも着かないだろう

どうするか…

まぁ、考えていても仕方がない

「時間まで全員で探すぞ!時間になったら全員集合場所へ集まれ。あと、見つけ次第連絡よこせよ!」

集まっているチームメンバーにそう言って、圭を探すために店を出た

本当に厄介なことをしてくれる

ついさっきまで近くに居たくせに!

大体俺達の心配もわかってくれよ!と内心泣き言を言いながらも、圭の気持ちが分からないわけではないので

圭を責めてばかりも居られないのは分かっている

誰だって危ないからと言って相手は行くくせに自分は連れて行ってもらえないのは不満があるだけだ



「チッ、ココにもいねぇか」

思い当たる場所を片っ端から走って行く

しかし、圭の影はない

どこへ行ったのだろうか…

「クソッ!見つけられなかった」

ガンッと壁を殴る

タイムオーバーだ

もうそろそろ戻らなければ始まってしまう



仕方なく引き返し、少し遅れて今日の集合場所へ着くともう始まっていた

「ヤエ!」

ヤエを囲んでいた奴らを背後から近づき倒していく

「イト、見つかったか?」

「いや、見つからなかった。それより、相手は?」

「あっちだ。半分くらいは倒した」

現状を教えて貰おうとした時、目の端に探していた姿を見つけた

「圭?!」

反対側の路地から丁度出てきたところだろう

たまたま通りかかって遭遇してしまったのだろう

「来るな!!今すぐ引き返せ!!」

この一帯に響く声で怒鳴る

圭はビクッと体を揺らしたがすぐに不安そうな顔を消してニコリと笑った

何だ?何か凄く嫌な予感がする



「アテンションプリーズ!」



圭の声がこの場に響く

この場には似つかわしくない綺麗な声音だ

自然と注目を集めている

「今日のBloodの喧嘩の相手は確か最近できたイブニングだっけ?まぁ、どーでもいいんですけど、イブニングの皆様、ちょーっといいですかぁ?」

相手を挑発する

頼むから何もやらかさないで逃げてくれ

「チーム、reachの皆様がイブニングの皆様にお怒りですよ?それに、こないだの約束、破りましたよね?」

約束?お前!俺の知らないところでこいつらと関わったのか?!

「コール!」

しかも、コールするのか…



わざわざ自分が関われるネタを探してきたのだろう

reachの皆様を引き連れて



全く、本当に、目を放すと何をするか分からない

ザッとreachのメンバーが圭の後ろに立ち並ぶ

視線は完全にイブニングの方に向いている

そして、イブニングの方も圭を含めたreachの方へと向いてしまっている



本当に…仕方ねぇなぁ…

なんて、思う反面

「そんなにすんなりと納得するわけねぇだろう!」

やっぱり怒りの方が勝ってしまった



あんだけ散々心配させて、探させて、自ら危険に巻き込まれにやってきた

更に、コールしたことでこの喧嘩を中断させ、挙句に、俺にも喧嘩を売ったことに変わりはない



「そんなに御仕置きされたいわけだ?」

「え?ちょ、ちょっとイト?何でそんなに怒ってるの?!」



いつもと違う展開にあたふたとしている圭を尻目に、ヤエに目線で確認を取るとヤエもにっこりと笑顔で頷き返した



「俺達はお前の敵だ!」

堂々と宣言する

「え、嘘っ!ちょ、ちょっとイト!」

動揺している圭は無視して、あっさりと捕まえ

「俺に喧嘩売っといて味方につくわけがねぇだろーが。大体!そいつらは危ないから関わるなと言っておいただろ!」

「え?え…そうだっけ?」

「とにかく、帰ってお仕置きだな」

「えぇー?!」

もう俺達の喧嘩なんてそっちのけで向こうは始めてしまっているので、俺は圭を担いで溜り場へと向かう



まったく。

本当に目が放せないよ。お前は…

けど、まったく覚えないお前に、俺は何度でも教えてやる



「俺は本当に心配なんだよ。今回だって、無事だったから良かったけど、何があるか分からないんだからな!」



過保護と言われようと、保護者と言われようと何度だって言うよ

俺はお前が大切だから







あとがき

3万HITありがとうございました!



とりあえず、4万が控えてます。

日頃来て下さってる皆様!本当に感謝です



2009/08/04





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