[ weather chart No.1 閑散 (前編) ]


雲ひとつ無い晴天の昼下がり


衝撃的な事件が起こった


- weather chart : sunny weather - (the first part)

「ただいまー」
家に入るといつもならばパタパタと駆け寄ってくる愛犬も母親の姿もない
おかしいな?と首を傾げながらリビングに入ると部屋の中は真っ暗だった
「ただいまー・・・?」
電気をつけてみて呆然となる


何で?
どうして?


真っ白な頭の中では全く答えなど出てこない
朝までは普通だった。
いつもと同じ朝でいつもと同じように家族と挨拶を交わした場所
なのに、今ではその欠片もない


「どういうこと?」
何で何も無いの?


閑散とした部屋の中で取り残されたように紙が一枚部屋の中央に落ちていた
まるで、今の自分と同じように


『駆へ
この紙を見たらすぐに親戚の家に行きなさい』


ただそれだけが書かれている紙を見て
首を傾げながらも、親戚の家に行けば事情が分かるかもしれないと期待してとりあえず、自分の部屋だった場所へと向かった
自分の部屋の中も、もう既に片付けられたあとで何も無かった
お気に入りだったステレオも服も全て
一体どこへ行ったんだ…


全ての部屋に何も残っていないことを確認して家を出ようとした矢先
玄関が開いた


「お?誰か居るぞ」
知らない男の声がする
まさか泥棒か?と不審に思いながらそっと玄関を伺った
玄関には数人の男の人が居た
そのうちの一人がこちらに気づき
「誰だ!」
と叫んだ
それと同時にその場に居た奴らが身構える
その様子に咄嗟にリビングの扉の裏に隠れる
しまった。どっちにしろこっちに来られたら逃げ場がない


ゆっくりと彼らはこちらへと近づいてくる
じりじりと迫ってくる感覚に自然と焦りと手に汗が滲んでいた
チラッと見た彼らは見るからにまともな職業の人たちではなく、世間では滅多に目にかかるようなことがない裏社会の人間ではないかと思わせるような人たちだった


まさか、殺される?


最悪な事態を想像した矢先に
バンッと扉を開かれた
『グエッ』
歯を食いしばりかろうじて声には出さなかったが、もし声に出していたらこんな声にならない声を出していただろう
考え事をしていた自分も悪いけれど、不意打ちで扉と壁に挟まれてダメージは大きい
でも、扉の裏に居たことが幸いしてかまだ気づかれていない
リビングとキッチン内を調べ始めた彼らを見て
扉の後ろから素早く抜け出し一目散に玄関に向かった
その途中で気付かれて後ろから追いかけてくる気配を感じるが今は逃げることが最優先だ
靴をつかんで外へ出たところで


「うわっ」
「えっ?」


知らない人とぶつかった
「す、すみません!」
慌てて謝って逃げようとしたが後ろから追いつかれてしまい
襟を捕まれ逃げられなくなってしまった
「やっと捕まえた!梃子摺らせやがって」
首の辺りをがっしりと腕で固定されて動けない
「ちょっと、その子何かしたんですか?」
家の前でぶつかった人がそう後ろで俺を捕まえている奴に聞いた
「は?てめぇには関係ねぇだろ?今は取り込み中だ。さっさと帰んな」
後ろに居るやつはそう言って扉を閉めようとしたが前の男はそれを許さなかった
「関係あるんですよ。彼にではないですけど。ココの家の住人にね」
「そいつらなら夜逃げしたぜ」
後ろからまた別の声がした
「また貴方ですか」
前の人がため息をつく
「よぉ、最近よく会うな。沢木」
「そうですね。できれば会いたくなんてなかったんですけどね。東雲さん」


目の前の人が沢木さんで後ろから来た人が東雲さんと言うのか…
チラッと後ろの東雲を見ると
ガラの悪いスーツを身に纏い、いかにも○道とか893とかの人っぽかった




両親へ。
できれば何故急がなければいけないのか理由を教えて欲しかった
もし、あの時すぐに家を出ていれば…
こんなことにはならなかったかもしれないのに







← Back   NEXT →

ページ一覧】【一言】【TOP】【HOME

Copyright(C) Shino komanami.All Rights Reserved.