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週があけまたいつもと変わらない退屈な日が始まった

放課後、今日も圭介は用事があるというので一人退屈を持て余す。

またやりたいことを探すのもいいが今日は普通にまったりと過ごしたい気分だったので屋上に行くことにした

屋上からはグラウンドや屋上のすぐ隣の棟にあるプールが見える

どちらも部活動をやっている時間の為賑やかな声が聞こえてくる

ぼんやりと賑やかな声を聞きながら空を見る

自分とは関係ない世界、楽しそうな声・・・羨ましいという感情が湧いてきた。羨ましいと思っても自分からその世界に入ることもできず何もすることができないのに。

何も考えないようにして空を見る。

どのくらいぼーっとしていたかは分からないが気づくと自分以外の人の声が聞こえた

ココは屋上のドアの屋根の上でしかも貯水タンクの裏に居るので滅多なことでは見つかることはないだろう。

先に居たのは自分の方だからと気にせずそのままぼーっと空を見続けた

「先生、好きです!!」

『ふぐっ』

思わず噴出しかけ慌てて口を塞ぐ

まさか告白だとは思わなかった。しかも先生に

この学校は確か有名大学付属の進学校だが共学ではなく男子校だったはずだ。

つまり・・・告白している者は男子生徒で告白されているのは先生。

女で独身の先生は極わずかのはずだ。一体誰が告白されているのだろう?とちょっと興味はあったが先ほど思わず声を上げかけてしまったのでバレているとまずいので大人しく声を聞くだけにしておく

「悪いけど、きみのことをそういう風には見れない」

やんわりと断っているが声を聞いて驚いた

告白されているのはよく知っている人物だ

「それでも・・・伝えたかったんです。すみません。聞いてくれてありがとうございました」

バタバタと告白した方が走って出て行く



あーぁ、失恋しちゃったね。可哀相に



そんなことを考えていると

「誰かそこに居るんだろ?盗み聞きしてないで出てきたらどうだ?」

と声を掛けられる

あーぁ、やっぱりバレちゃったか

「こんにちは、高林先生」

起き上がって貯水タンクの裏から出て屋根の上に座る

俺がココにいるとは思わなかったようで高林先生は凄く驚いていた

「浅木か。珍しいところに居たんだな」

「珍しいですか?まぁ、今日はまったりとした時間を過ごしたくて偶然屋上に来てたんですけどね。いやー、ビックリしましたよ。ぼーっとしてたら突然甘酸っぱいイベントが始まるんだもん」

さっきの告白をからかってそう言った

「甘酸っぱいイベントか。浅木は彼女とか居るのか?」

「突然何でそんなこと聞くんですか?」

高林先生からそんな質問が来るとは思っても見なかったのでビックリしてそう聞き返した

「ま、ちょっとした好奇心かな」

「ふーん。まぁ、いいけど。彼女はいませんよ。居たら毎日暇つぶしなんて考えません」

「それもそうか」

と納得したように頷く先生にちょっとムッとする

「そういう先生はどーなの?」

確か先生は23歳だと誰かが言っていた気がする

一般的にカッコイイと言われる顔立ちをしている先生はそれなりに人気もあるし女が放って置かないだろうと思いそう聞いてみた

「俺もいないよ。好きな奴はいるけどな」

「ふーん。片想いなんだ。可愛い人?」

「いや、普通かな?」

「へぇー。両想いになれるといいね」

スッと屋上の屋根から飛び降りドアへと向かう

「それじゃあ俺はそろそろ失礼しますね?」

「浅木」

出ようと扉に掛けた手を掴まれる

「何ですか?」

「俺は・・・お前が好きだ」



コレは先ほどのイベントの続きだろうか?

二段仕込みだったとは思わなかったとぼんやり思いながら高林先生を見た




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