「学校の先生と鉢合わせなんて初めてだよね。ビックリしたねー」
タキと軽食を取る為に移動している途中でタキがそう言ってきた
「そうだね。夜じゃなくて本当に良かった・・・。どうしようかなー、今日。思い切り暇つぶしするつもりで来てたのに」
誰か同じ暇を持て余した人か気に入ってくれている人を捕まえようと思っていたのにこれでは難しいかもしれない
夕食を食べ、外に出るともう日も沈み夜の街となっていた
タキと一緒にぶらぶらと街を歩く
喧嘩をする人も危ない人もこの大通りではこの時間帯はまだいない。
この界隈が危なくなるのは夜9時や10時を過ぎた頃の酔っ払いが多くなった時間帯だ
しかし、学校の先生が見回るのはこの界隈だから早めに通りすぎなければならない
「村田?」
後ろから見知らぬ人にタキが声を掛けられた
本名と言うことはこの辺で捕まえた人じゃないのだろう
「うぇっ、ピカソじゃん」
「知り合い?」
嫌そうに顔を歪めるタキにそっと聞いてみる
「学校の美術の先公」
この時間に先生と会うのはちょっとまずいかもしれない
「お前こんな所で何やってるんだ?」
「何って友達と遊んで今から帰るところだよ」
「そうか。危ないからこの界隈には近づくなと言ってあるだろう?次からもっと明るい時間に帰るようにしろよ」
「はぁーい」
軽い忠告を受けただけで帰っていいようだ
「お前ら真っ直ぐ帰れよ!」
後ろから先生にそう最後に言われた
「タキ、今日は真っ直ぐ帰ろうか・・・」
一本中の道に入るとこのような見回りも少なくなるだろうが逆に中で見つかるほうが厄介だ
「そうだね・・・忠告を受けたあとで見つかるのはまずいし」
タキも今さっき見つかったのが堪えたのか大人しく頷く
「あ、これ一つミキにあげる」
そう言って持っていたぬいぐるみの一つを渡してくる
「いいの?」
「うん。どうせ同じポーズのぬいぐるみ2つもいらないし、ミキにあげるつもりだったから貰ってよ」
「ありがとう」
受け取ったぬいぐるみを見て、ぬいぐるみなんて久しぶりだなぁ・・・と思う
邪魔になるだけだからと自分で取ることもしないし貰うこともないので本当に久しぶりだった
「大事に飾っといてよ!今度ちゃんと置いてあるか見に行くからねー」
「それって単純に俺の家に来たいだけなんじゃないの?」
ぬいぐるみを口実に部屋に来ようという企みがあったことに気づき返そうかとも考えたがタキがくれると言う物を返すのも悪い気がしてぬいぐるみは有難く貰うことにする
「まぁ、これはちゃんと飾っておくよ」
どこに置こうか考えながら歩いていると誰かに肩を掴まれた
「浅木」
「えっ?」
振り返ると本日二度目の高林先生だ
「俺の次はミキかー」
今日は本当についてないねーなんて言うタキの頭を軽く小突いて
「高林先生、今日はよく会いますね」
愛想笑いでそう言ってみる
「本当にな、何でこんな時間までまだこの辺をうろついてるんだ?」
「ついさっきまで向こうのファミレスでタキと夕食を食べてたんですよ。今はその帰りです」
そう言って繁華街の出口である道を指す
あと数メートルでこの場所からは出るところだったのに
「全く、この辺は治安が悪いからと言ってるのに、この界隈じゃなくてもファミレスは他にもあるだろ」
「うーん、でも特大フルーツパフェが一番美味しいのはそこの『ライームズ』っていうファミレスなんですよね」
このパフェより美味しい店は滅多にないと思うくらいこのパフェは拘っている
「パフェくらいどこにでもあるだろう。本当に・・・この向こうの道も最近喧嘩とかが多いと警察から警戒するように注意が来てたから気をつけて帰れよ」
「分かってますよ。じゃあ、今度こそさようなら。先生」
バイバイと手を振ってタキを引き連れて帰る
途中でタキとは道が逆なので別れて家に帰った