[27]

過去に何があったかなんて今更思い出したくも無かった
今までで一番充実していて、楽しかった日々
多くの人に会い、友達として、ライバルとして様々な知識を得ることができた
これからもずっとこれは変わらない、不動のものだと信じていたのにそれはあっさりと崩れ去った
自分が招いたこととは言え、全てを失ったも同然のあの時のことは今でも自分の中で深く残っている
あの日を境に全ての時間が自分にとって「暇つぶし」になってしまったのだから・・・



「美希也、何貰ったんだ?」
図書館を出て少し歩いたところで圭介がそう聞いてきた
「・・・雑誌。何の雑誌かは言いたくない」
まだ言えない
否、きっと、ずっと言わないだろう
過去に何があったのかを
一度決めたことはほぼ揺るがないことを知っている圭介はそれ以上何も聞いてこなかった
「あ、美希也、高林先生が家まで送ってくれるって」
そう楓に言われて、少し迷ったが今は彼らと一緒に居たい気分ではなかったので断って圭介と一緒に歩いて帰ることにした
「よかったのか?」
学校を出てから圭介にそう聞かれたので頷き返す
どうせ一緒に居ても楓に嫉妬してしまうだけだっただろう
今日はずっと苛々していたのでこれ以上一緒にいたら何か言ってしまいそうだったのだ
「なぁ、美希也。何か色々溜め込んでるみたいだけど、適当なところで息抜きしろよ?あの先生が構ってくれないんだったら、俺だっているし、タキやマスターもお前の頼みだったらいつでも付き合ってくれるだろうからさ」
「うん、ありがとう。でも、そんなにストレス溜まってないしまだ月曜日だよ?」
気を遣ってくれるのはありがたいが、そこまで弱っているつもりもない
「それならいいけどさ。楓の勉強についていけなくなったらいつでも言って来いよ?教えてやるからさ」
そういえばさっき楓と勉強する約束をしてしまったことを思い出す
しかし、心配するほどの問題でもないだろう
兄弟なのだ。これを機会に仲良くなれるかもしれない
「無理だと思ったら頼りにするね」
にこりと微笑み圭介にそう言った



家に帰るともう楓は帰ってきているみたいでリビングが賑やかだった
そのままリビングに顔を出さずに自室に行き、まっすぐベッドに寝転がった
思ったよりもストレスを感じていたのかもしれない
少し疲れたみたいだ
暫くぼんやりと天井を眺めていたが、制服が皺になってしまうと思い出し、慌てて制服を脱ぎ着替えた
鞄の中から司書の金井彩から渡された雑誌を取り出しパラパラと捲る
自分にはもう関係のない物。でも、見てしまうとかつての仲間だった人たちの活躍が取り上げられていて、ついつい記事を目で追っていた



今更知ってもどうにもならないのに



なんだか寂しくなり雑誌を閉じると机の上に置きまたベッドに横になり目を閉じる
少しだけ、今は何も考えたくなかったから無心になるために目を閉じただけだったはずがいつの間にか眠ってしまっていた


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