[29]

夏の定番メニューでもある冷奴
豆腐の上にネギがあり、醤油が掛かっている。そこまではいいが、冷奴に何故か生姜がのっていた
「ねぇ、冷奴の上にのせるのって生姜だっけ?」
そう聞くと皆不思議そうな顔をしてこちらを見る
あれ?変なこと聞いたかな?
「冷奴と言えば生姜でしょう?わさびがのってたら嫌じゃない?」
楓がそう答えてくれた
確かにわさびと冷奴の組み合わせはなんだか考え難い
好きな人はいるかもしれないが好みではない
「わさびは嫌だけど、冷奴って辛子じゃなかったっけ?」
田舎の地方限定だったのかな?
確かに冷奴にのっているのは黄色い物だったが生姜じゃなく辛子だったはずだ
「地域によっては辛子だったり生姜だったりするのよ。確かにお祖母ちゃんは辛子派だったわね。ごめんなさいね、忘れていたわ」
「あ、地域によって違うんだ。ビックリしたー」
自分の記憶違いかと少し不安になっただけなのだ
でも、生姜がのった冷奴は初めて食べる
どんな味なのか少し興味があった
「なんか冷奴に辛子って不思議な組み合わせだね。美味しいの?」
楓がそう聞いてくる
今自分が生姜と冷奴の組み合わせを不思議に感じているのと同じようなことなんだろう
「美味しいよ。今度食べてみたら?」
今はもう生姜がのっているので試してみることはできないのでそう言った
それよりも生姜と冷奴に挑戦してみる
食べてみると意外と美味しい組み合わせでビックリした



それから暫く和やかに夕食を食べているとふと思い出したように頼子が
「そういえば、楓も美希也もそろそろ中間試験なんじゃない?」
と聞いた
あまり聞きたくない話題だが逃げることはできない
「来週の水・木・金にテストだよ」
楓が答える
もうすぐって本当にもうすぐだったのか
来週なんてあっという間にきてしまいそうだ
「あら、もう1週間程しかないのね。二人ともちゃんとお勉強してる?」
「してるよ。これからは美希也と一緒に勉強する約束もしたし」
と楓が話した
「それならいいけど・・・美希也にとっては初めての中間だし不安もあると思うけど頑張ってね」
皆、楓より俺のことのほうが心配のようでさっきからチラチラと視線を送ってくる
「あー・・・うん。それなりにね」
一応高校入試で合格して入学しているのに何故母親まで、こんなにも心配するのか不思議だった
「俺そんなに勉強しないように見える?」
そう訊いてみるとやっぱり答えにくいのかちょっと視線を彷徨わせてから
「そういうわけじゃないけれど、やっぱり学校にも慣れるのに時間が掛かるでしょう?それに中学から慣れているエスカレータ組に比べると不利じゃないかと思って・・・」
そう答えた頼子に一応納得の意を示す
「そっか。まぁ、頑張るよ」
ここまで心配されると少しは勉強した方がいいのかな?と多少頑張ろうという気持になる
「そうだ!聡広さんの迷惑でなければちょこちょこ二人の勉強を見てもらえません?」
良い機会だとばかりに頼子がそう提案する
「えっ!母さん高林先生は今は俺達の学校の英語講師をしてるんだよ?さすがに無理だって」
慌ててそういう楓にそういえば聡広とはどういう関係なんだろうとさっき疑問に思ったことを思い出した
「でも、学校で教えていることと同じことだけなら大丈夫でしょう?」
ケロリとそういう母は強かった
「そうですね。まぁ、どこが出るかとかは言えませんけど全体的にでよければ見てあげることはできますよ」
と聡広も言ったことで、聡広の特別授業が行われることになった


← Back   NEXT →

ページ一覧】【一言】【TOP】【HOME

Copyright(C) Shino komanami.All Rights Reserved.