[30]

「ねぇ、高林先生って母さん達とも仲が良さそうだけど、どうして?」
夕食後勉強道具を持って楓の部屋に来てすぐに楓に質問した
聡広はリビングで後片付けの手伝いをしているので今はいない
「あぁ、高林先生は去年まで俺の家庭教師をしてくれてたんだ。だから家族とも仲が良いんだよ」
「へぇー」
意外な接点があったことを知ってビックリする
そういえば初めて会った時に間違われた時にも名前で呼んでいたなと思いだした
「さ、それより勉強しようか!美希也は何が苦手?」
さっさと勉強モードに切り替える楓にもうちょっと勉強から離れていたかったのに・・・と不満に思いながら
自分の苦手科目を言っていく
「ふーん・・・って、結局全部苦手なんじゃない!」
「苦手なんだから仕方ないだろ?」
「まぁ・・・受験して入学できたんだしきっと努力したら何とか苦手も克服できるって!よし!分からないところがあったら教えてあげるし遠慮なく言ってね」
楓はポジティブに考え、バラバラと教科書を広げ始めた
さ、自分は何から始めようか?と教科書をそれぞれ見てまずは理科を勉強することに決めて取り組むことにした



勉強を始めて10分が経過した頃聡広が楓の部屋にやってきた
「進んでいる?」
そう聞いてくる聡広に何も言えずに沈黙する
10分が経過したがまだ教科書で理解を深めている段階で問題集にも手が付けられていない
「高林先生ーココまでできたんだけど、答えが合ってるか分からないから見てほしいんだけど・・・」
楓がノートを見せ、教えを請う
ストレートに接することができる楓が羨ましかった
いくら羨んでもそれは結局無いものねだりでしかない
横で英語の問題の解説をし、メモを取ったり頷いたりしている楓と聡広を横目で見ながら、理科の勉強を進めた
しかし、教科書の文章など隣が気になってほとんど頭に入ってこない
自分の勉強に集中しなきゃと思うと余計な力が入るのか全く身につかない
このままだといけないと思い少し早いが問題集を開き問題を解きながら理解するやり方に勉強方法を変える
まだ二人のことが気になるが、それでも多少は考えることができるようになってきた
教科書を見ながら1ページの半分を埋めたところで
「美希也はどう思う?」
と、突然話を振られた
「えっ?」
「だから!この感嘆文の問題なんだけど、Whatが入ってる文で『なんと』とか『なんて』という訳になるのは分かるんだけど、Howしか入っていない文章で『なんて』って訳すのはおかしいと思わない?」
どうやら英語の問題について聞かれていたようだ
「何で?感嘆文って『なんて〜だろう』って訳すものだからWhatでもHowでもどっちでも訳のやり方は一緒じゃない?」
そういうと楓はその回答が不満だったのか「えー何でー」と文句を言っている
「何でって・・・そうだから?大体WhatとHowじゃ文章の種類が違うんだからHowの文じゃWhatが使えないのは仕方ないと思うんだけど?ねぇ、高林先生。俺の考え間違ってる?」
文法に関してのみは自信があるので間違ってるとは思っていないが手っ取り早くそう訊ねた
「いや、合ってるよ。Whatの方は『形容詞+名詞+主語+動詞+!』だけど、Howの方は『形容詞(副詞)+主語+動詞+!』だからね」
「・・・ナニソレ?」
なにそれって感嘆文の作り方だけれど?
思わず心の中でツッコミを入れた。楓はどうやら単純に構造を理解していなかっただけのようだ




← Back   NEXT →

ページ一覧】【一言】【TOP】【HOME

Copyright(C) Shino komanami.All Rights Reserved.