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中々理解できないようで楓は感嘆文の作り方で頭を悩ませている
「じゃあ、『彼はなんて本を読むのが早いんだろう!』っていう文章を作ってみてよ」
例題として問題を出してみる
「うーん・・・How read he fast!」
「readは動詞だからそこにこないって」
完全に混乱しているようだ
「分からない・・・あ!そうだ、ヒント!せめて元の文章を教えてよ!」
「えーっと、彼は本を読むのが速いだから、『He read a very fast book.』かな?」
「うーん・・・」
さっきの回答が近かったのに余計に答えから遠くしてしまったかな?と少し不安に思いながら答えを待つ
「主語と動詞と形容詞だから・・・How fast book he read !」
「おしいけど、そうするならbookはいらない。bookは名詞だ」
「因みに今の文章からだとWhatを使ったら分かりやすかったと思うよ。What a fast book he read!で作れたから」
聡広と交互に言ったので楓は余計に項垂れている
「うぅー、bookは形容詞に含まれないのか・・・」
「きっとそのうち理解できるって!がんばれ楓!」
さすがに凹んでしまっているなと思わず励ます
「美希也・・・ありがとう!うん。そうだよね!何回かやってるうちに分かるようになるよね!頑張ってみる」
どうやら元気が出たようだ
切り替えの速さに驚きながら解決したならもういいかと訳の分からない理科の問題に戻ることにした
聡広は理科は得意じゃないのかな・・・
誰でもいいから分かりやすく教えて欲しいと切実に思い始めてきた



「今日はこれくらいで終わりにしようか」
楓がそう切り出したのはあと数分で日付が変わろうかという頃だった
結局勉強は思うように進まなかった
「それじゃあ、おやすみ」
さっさと勉強道具を片付けて部屋に戻る
今日はずっと楓と聡広が仲良く英語の勉強をしているのが羨ましくて仕方が無かった
「俺と付き合ってるくせに!」
楓とは以前からの知り合い、しかも家庭教師として教えていた生徒なのだからお互い教え、教わることに慣れているのは当然だろう
それでも、嫉妬してしまう
「俺もあんなふうに聞けたらな・・・」
素直に行動できない自分が酷く悔しかった
今日はもう寝てしまおうと不貞寝を決め込みベッドに入る
目を閉じると否応無く先ほどの楓と聡広の姿が鮮明に見える
余程ショックだったのかもしれない
彼らが知り合いで、しかも親しげだったことが
「あーっ!もう!」
これではまともに寝れるわけが無い
仕方なく起き上がり気を紛らわすために勉強することにした




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