[33]

HRには間に合い、1時間目が始まろうと言う頃、前の座席の圭介がこちらを振り返り
「で、朝の高里との追いかけっこは何だったんだよ?」
と訊いてきた
「別にー。追いかけっこじゃないよ。遅刻しないように教室まで走ってただけだもん」
朝の楓と走っていたのを圭介に見られていたとは思わなかったので思わず言い訳めいた口調で返してしまう
「ふーん?でも珍しいな。高里と一緒に登校してくるなんて。今まで無かっただろ?」
圭介は本当に俺に関しては詳しい
まだ短い付き合いだが俺より知り尽くしているんじゃないかと疑うほどに
「そうだけどさ。今日は寝坊したんだよ。ただそれだけ」
素っ気無く話を終わらせるように言葉を切った
「寝坊ねぇ?家で寝坊なんてあまりないよな?」
それでも追求してくる圭介に何でそんな些細なことまで知ってるんだ?と本気で恐ろしくなる
「昨日の夜寝つけなくて眠くなるまで勉強してたんだよ。ただそれだけ!」
「へぇ、珍しいこともあるものだな」
おい、確かに珍しいかもしれないけれど、かなり失礼じゃないか?
じとっと睨んでいるとこちらの考えが伝わったのか
「別に関心しただけだからな。癇に障ったなら悪かったよ」
とフォローしてくる
本当にそういう意味だったのか疑わしいが一応頷いて
「でも、色々あって…複雑な気分なんだよねー。後で俺の話し聞いてくれる?」
と圭介にお願いする
こうやって色々話すから圭介は俺のことを詳しくなっていってるんだろうけど、何でも話せる友達がいるということが今はとてもありがたかった
圭介には聡広とのことも話しているので気兼ねすることなく話すことができる
「何かあったのか。いいよ、昼休みにじっくり聞いてやるよ」
そう言ってにやりと笑う圭介にそこまでじっくり聞かなくてもいいんだけど・・・と思いながら
「じゃあ、昼休み宜しくな」
と約束した
どちらにせよ、いつも一緒にお昼ご飯を食べているので普段と変わらない



昨日のできごとをどう圭介に話そうか・・・
そう考えているとあっと言う間に午前の授業が終わった
「美希也、お昼にしよう!」
そして話を聞かせてくれるよな?と笑顔がそう言っている
「とりあえず・・・屋上に行かない?」
教室の中では話しにくい。楓はそれなりに知名度があり話がすぐに皆に伝わってしまうだろう
それを察してか圭介も頷き黙って教室を出た




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