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図書資料室を出ると今日はもう何もする気にはなれず、そのまま帰路についた
家に帰ると楓の靴はないのでまだ帰ってきていないことが分かる
きっとまだ聡広と図書室で勉強をしているんだろうな・・・
そう思うとやっぱり苛々してくる
「いっそ遊びに行ってしまおうかな・・・」
聡広と付き合い始めてから質の悪い遊びは控えていた
しかし、こうも嫉妬で苛々していると何も手につかない。それならいっそストレス発散にでも出かけるべきだろうか?
「誰か呼べば捕まるかな・・・?」
圭介でも呼び出そうかと思ったがあいつは今日用事があるとかで急いで帰っていたことを思い出し呼び出す候補者リストから即座に外す
「やっぱりタキかなー?」
相談役には不向きだが気軽に遊ぶ分には気が合うので少しはストレス発散もできるだろう
電話をしてみようと携帯を開いた時、玄関が騒がしくなった
どうやら楓が帰ってきたようだ
出迎える気もないので部屋から出ることもしない
今日は昨日より早いな・・・無意識に時計を見た
そして後悔する。
「だからなんだって言うんだよ・・・」
少し頭を抱えてベッドに横になった
「本当・・・重症だなー」
こんなに相手にのめり込むなんて・・・付き合い始めた当初は思いもしなかった
「さっさと電話してしまおう」
放置してしまった電話を取り番号を呼び出していた時、突然扉が『バンッ』と大きな音を立てて開いた
「美希也!」
バタバタと入ってきたのは楓と聡広だった
「入らないでっ!」
咄嗟に叫ぶ
今、彼らを部屋の中に入れたくなかったのだ
「美希也?」
「悪いけど電話するから出て行ってくれない?」
思ったより冷たく聞こえる声になってしまったが、今彼らに部屋の中に入られるよりはマシだ
「それとも、急用?」
「いや・・・たいした事じゃないから・・・」
「そう、じゃあ後にして」
通話ボタンを押し電話を耳に当てる
呼び出し音を聞きながら扉が完全に閉まるのを確認した
『もしもし?』
電話に出たタキにほっとする
「タキ・・・なんかもう・・・ダメかも」
目から涙が止まらない
何で今日も楓と一緒にこの家に居るのかとか、今何の用があったのだろうとか嫌な想像ばかりしてしまう
こんな自分がもっと嫌だった




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