[65]

「ねぇ、楓」
震えそうになる声を頑張って絞り出す
「なに?」
「楓は・・・先生のこと好き?」
聞きたくなんかない。でも、聞いておかないとスッキリしない
「好きだよ?ん?・・・あれ?もしかして、美希也も先生のこと好きなの?ダメだよ!先生は俺と付き合ってるんだから」
『俺と付き合ってるんだから』
心に深く沈んで行く
好きなのかもとは思っていたけど・・・
付き合ってたんだ?
「お、おい!楓!何言ってるんだ」
聡広が慌てている
本当なんだ・・・


何だ・・・最後に白黒つけるついでにお節介焼いてやろうと思ったのに。


「もぉー!先生も俺が居るのに!」
「美希也!嘘だからな!俺は楓と付き合ってない!」
「先生ひっどーい!」
ギャンギャンとやり合う二人に
「大丈夫、先生も楓のこと好きだって」
と軽く微笑んだ
・・・つもりだ。
もう、しんどくてちゃんと笑えてるか気にする余裕なんて残っていないんだ
「ねぇ、先生?」
そう問い掛けると俺がそんなこと言うとは思っていなかったのか驚いている
「先生、正直に言ってね。試験前、三人で勉強していた時、どっちを見ていた?」
決まってるよね?
「俺と楓、どっちを優先させた?」
勉強だけじゃないよ。
その後の約束も
「俺が気付いてないと思ってた?」
あんなにあからさまなのは、さすがに気付くよ
「で、俺と楓どっちが好き?」
ずっと見ていたのも、優先したのも楓だよ
悩む時間は散々あったよね?
これで、ハッキリさせよう?
「・・・」
もう、答えはあるよね?
「・・・楓だ」


・・・
分かっていたことだけど、ハッキリ言われるのは辛いな・・・
「良かったね、心配しなくても先生と両想いだよ。俺はさっき告白してフラれちゃった。先生は楓が好きだって」
楓に笑い掛けて
彼らと少し距離を取る
「それじゃあ、邪魔者は消えようかな。バイバイ」
軽く手を振って逃げるように公園を出てきた


「愛をくれるって言ったくせに」


「約束・・・結局守って貰えなかったな」
望んでも手に入らないのに、俺の欲しい物を持っている楓が羨ましくなる


本当に・・・
羨ましいね。
俺が望んでも手に入らない物を望まなくても手に入れられるんだから


「まぁ、いい暇潰しにはなったかな・・・」
長くは続かなかったけれど恋愛ごっこと言うのもいつもと違う刺激はあった
楽しかったのは最初だけだったけれど・・・
「明日からどうしよう」


どうもしない。聡広と会う前に戻るだけ




もう、何も望まない。




-kill time- END


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