風紀委員の一匹狼
気付けば、そう呼ばれていた。
「なぁ、お前誰だ?」
久しぶりに風紀委員の執務室である、生徒指導室に顔をだしたら、見知らぬ髪をボサボサにした奴に話し掛けられた。
てか、お前こそ誰だよ?と、思ったけれど面倒だから言わない。
「なぁ、無視すんなよー!」
返事をしなかったら喚くそいつに苛立つ。
何だよ。こいつは!
「彼は、高沢邦明と言って風紀の会計。更に言うと風紀の一匹狼ってことで有名な不良だよ」
危ないから近づかないようにね。と説明するのは生徒会の書記…
何で生徒会がココにいるんだよ!
「会長、先週分の書類ココ置いとくな」
パサッと書類を会長の席に置いて自分の席に積まれてる書類を持っていく。
最近俺に割り当てられている仕事の量が多くなっているような気がするのは気のせいだろうか…
「一匹狼って、邦明は寂しくないのか?」
…コイツ今何て言った?
思わず睨みつけると少し怯んだのか
「な、何だよ?」
と、少し後退りながら聞き返される。
「お前、今何て言った?」
「…はぁ?寂しくないのか?って聞いたけど」
「その少し前だ」
「…覚えてない」
…覚えとけよ!
ほんの数秒前のことだろ?
「それより、邦明!」
「それだ」
言葉を遮って止めた。
「勝手に名前で呼ばないでくんねぇ?」
「な、何でだよ!」
喚くそいつを一瞥して
「名前も知らない奴に呼び捨てになんかされたくない」
と、言い捨てて俺は生徒指導室から出た。
中は一気に騒がしくなったけれどもう関わることもないだろう。
それにしても…と思い返す。恐らくさっきの奴が最近転校してきて生徒会役員を手なずけ、風紀委員にも好かれているという噂の奴だろう。
噂通り、ボサボサの髪に分厚い眼鏡でキモい奴だった。
「邦明ー!」
おーいとこちらに向かって笑顔で手を振るのは俺の同室者である高橋優太
因みにこの学校は寮生活を義務付けていて、部屋は名前順らしい。
「どしたの?ココに来るなんて珍しいじゃん」
ニコニコ笑ってそう言う優太に思わず苦笑を零す。
無意識に屋上に来ていたようだ。
「たまには…な。それより、ついさっき噂の転校生を生徒指導室でみたぜ」
そう言うと優太は驚いたのか目を見開いた後
「へぇ、そっかー。で、どうだった?」
と聞いてきた。
そういえば、優太は転校生と同じクラスだったな…と思い出す
「苛つく奴だった」
ムスッとした顔で答えると「あははっ」と軽く笑われた。
笑いごとじゃないんだけどな
「しかも名前勝手に呼ぶし」
「ふーん…で、気に入ったの?」
「はぁ?冗談じゃねぇし」
大体、あんなキモい奴を誰が気に入るってんだ
「あ、そうなの?学校の有名人は片っ端からあいつのこと構ってるから何か引き付けるオーラがあるのかと思ったのに。意外だなー」
ニコニコ笑ってそう言い、この学校の状況を楽しんでいる優太にため息をついた
「いい加減にしとけよ?何であんな奴に構うのやら…」
さっぱり分からない。
そう、この時はそう思って居たのだ。
何であんな野郎を好み構うのかなんて全く理解できないと。
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