[ 君が望む幸せ 6]

- 数ヵ月後 -



「「でも、あの転校生には感謝しないとねぇー?」」
生徒会書記の双子がそう言いながら俺に圧し掛かる
止めてくれないかな。仕事の邪魔するのは
「本当に、生徒指導室に寄り付きもしなかった邦明があれからほぼ毎日来てくれるようになったしな」
ニヤリと笑う風紀委員長に誰のせいだ!と言い返したい。
言い返せないのは、双子が邪魔で声が出ないからだ
「ぐぅぅ…」
お願いだから退いてくれ!
大体!お前達がちゃんと仕事をしたら、俺は以前のように週数回顔を出して部屋で仕事するだけでいいはずなんだ!!
「「あ、そうそうー!ねぇ、知ってるー?」」
お前達の「ねぇ、知ってる?」は聞きたくない!!
「「今日、転校生が来るらしいよー」」
楽しみだね?と笑い合う双子
転校生なんてもうこりごりなのは俺だけか?


「名前はね、」
「浜川譲って言うらしいよ?」
そう言ってクスクス笑う双子


いや、笑えないから…てか、浜川譲って…
「おい、転校生を連れて来た」
バンッと大きく扉を開けたのは生徒会長。そして、彼の後ろには…
「あ、あの…明日からお世話になります。浜川譲です。よろしくお願いします!」
以前拾ったカードに載っていたのと同じ顔をした奴が居た
…あれ?まさかとは思ったけど…同一人物?いや、譲と名乗ったそいつは浜川悟とは似ても似つかない可愛らしい容姿や声をしていた
「「よろしくねぇー」」
にこにこと双子が応対している
「可愛いー!てか、ヤバくない?この学校じゃ?」
「本当、どうしてこんな学校に来ちゃったの?!でも、これならすぐに親衛隊もできるだろうし…」
あーでもないこーでもないと言い合う役員達
「コイツはもう風紀委員の補佐になることが決まってるから大丈夫だ」
入ってすぐに風紀委員補佐とか大変だな…は?風紀委員の補佐?何で?!
「生徒会は双子が居るからこれ以上増えても大変だし、生徒会より、風紀委員の方が体裁がいいに決まってるだろ?」
風紀委員書記にピンッと額を突かれる
地味に痛い…。
「えっと、よろしくお願いします」
そう言って頭を下げる浜川譲に数日も経てば役員の全員が構うようになっていた
…いや、まぁ…彼は風紀委員の補佐になったわけだし、彼の容姿も良いからか親衛隊もできて、誰も手を出さないし、仕事もちゃんとしてくれるからいいけどさ


一言だけどうしても言いたいことがある。
何で、最初からそっちで転校してこなかった?!


「ふふっ、だって、こっちだとちゃんと本質を見てくれないでしょう?それが嫌で中学時代に一度退学したんだけど、姿と名前を変えて、転校してきたら役員に捕まるし、それで、俺が望んでいたことをあいつらにしたら思った以上に激しいブーイングでビックリしちゃった。それに、親衛隊ってあんなに過激だったんだね。もうこんな場所来たくないって思っていたんだけど貴方が居たから、戻ってきちゃった」
そう言ってにこりと微笑む譲に背筋に寒気が走る
な、何だ?今の…
「ちゃんと、偽らずに会いに来たよ?」
あ…まさか…俺が最後に言った言葉…?
「あんな状況の中でも、邦明はちゃんと俺を見てくれた…それが分かって、凄く嬉しかったんだ。だから、邦明に会うためだけに帰ってきたんだ」
ふわりと甘い香りが鼻を掠めたと思ったらキスをされていた
ちょ、待って!何で俺…コイツにキスされたんだ?
「混乱してる?でも、本気だから…覚悟してね?」
そう言って笑う譲


何で俺はこんな奴を気に掛けてしまったんだろう。最後に少しでも気休めになればと助けようとしてしまったのだろう?


「譲!お茶にしようー」
「はーい」
にこにこと笑い和やかにお茶を楽しむ役員達
この光景が一瞬、数ヶ月前の悪夢を彷彿させた
数ヶ月前と決定的に違うのは、彼があの時のような空気が読めない馬鹿なフリをしていないことと、俺が一匹狼と呼ばれなくなったこと。
極力関わりたくなかったこの役員達に転校生であった『浜川悟』に巻き込まれて役員達と馴染んでしまったこと。



風紀委員の苦労性
気付けば、そう呼ばれていた。

End..




あとがき
ココまでお読み頂きありがとうございました!

当初企画投稿用作品だったのですが、このあまりに酷い登場人物イジメにマズイかしら?と思い辞めました。。

投稿用だったということで、この作品にはお題があります。
1.「貴方の云う幸福は理解しかねます」
2.脇役主人公
3.風紀委員

以上が必須条件でした。
脇役と言うことは、王道主人公が居るわけで・・・このお話での王道主人公は「浜川悟」でした。
だからこそ、悟があぁなったわけですが。
説明を始めると長いので、この辺で。。(残りは日記に持って行きます)

(2010.3.25)

← BACK 

ページ一覧】【一言】【TOP】【HOME

Copyright(C) Shino komanami.All Rights Reserved.