[06] エピローグ

「千紘?」

まだボーっとする頭を何とか起こして隣にいるはずの千紘に声を掛けた

パサッと上着が落ちる。

千紘が掛けてくれたのだろう。

その本人を探すが見当たらない

先に教室に帰ってしまったのだろうか?そう思い教室へ向かおうとして足を止めた

どこかで話し声がする

扉を挟んだ向こう側だ

裏に回ると千紘と数人の男子生徒が居た

千紘は知り合いが多い。

いわゆるサボリ仲間と言うやつだろう

声を掛けるかどうか迷ったが結局声は掛けずに帰る

あぁいうやつらと自分は関わるつもりは無かった。

結局あいつらは千紘の“友達”ではない。



「那智?」

先ほどまでそこで眠っていたはずなのに姿が見えない

自分の上着もなくなっているという事は上着を持ってどこかに行ってしまったのだろう

「何?逃げられちゃったわけ?」

ゲラゲラとその場に居た奴らは笑っているがそいつらの事は無視をする

恐らく自分に何も言わずに戻ったのにはコイツらが関係している事は明らかだ

「俺も教室戻るから」

一言声を掛けて階段を下りる

階段を下りきった所の階段の影で那智を見つけた

「那智?何やってるんだ?こ・・・」

こんな所で・・・と続けるはずが途中で口を押さえられる

「シー!!まだ授業中なんだから」

それを聞いて納得した

時間を確認し忘れていたがまだ廊下を出歩くには早かったらしい

「物凄く焦ったじゃん。あ、コレありがとな」

千紘に上着を返す

「いや・・・それより突然お前が居なくてビックリした」

「あー・・・何か話してたし邪魔したら悪いかなって」

「普段なら割り込んでくるのに?」

教室で誰かと話しているといつの間にか那智が同じ会話に加わっている

逆に自分も那智が誰かと話していると気になって会話に入っていく

「そう?まぁ、気分だよね?」

気分で会話に加わるか加わらないかが決まっているのか・・・お天気屋かよ。

那智がゆっくりと頭を俺の肩に乗せてくる

「那智?」

突然の事で驚いて声を掛けるが返事は無い

「まだ眠いのか?」

「んー・・・そう言うことにしておこうかな」

「何だそれは」

微笑する千紘には気にせず、そのまま目を閉じる

単に千紘に少し甘えたかっただけだ

千紘もそれが分かっているので大人しく肩を貸す



別に俺たちは恋人とかってわけではない。

俺一人が片想いをしているだけ



こんなに近くにいるのに

結局はまだまだ遠いのかもしれない。





FIN.




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