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3年前、俺は当時流行の引きこもりでニートだった
高校はかろうじて卒業したが、行く大学はなく1日中部屋で過ごした
別に対人恐怖症でも社会恐怖症でもなかったが、何もする気力がなかった
しかし、働いてお金を稼がなければ生きていくことはできない。
そこで始めたのが情報屋だった
パソコンやネットワークについては暇つぶしに色々弄り遊んでいたので自信もあった
だからこそ、情報屋なんて物をやろうと思ったのだろう
タイムマシンがあるなら、その時の自分に言ってやりたい。
「腐ったこと抜かしてんじゃねぇ!しっかり働きやがれ!!」
てな
残念ながらタイムマシンなんて物はないから過ぎた過去は変えることはできない
それに、もし、あったとしても昔の自分は素直にその助言を受け入れることはしないだろう
情報屋の仕事は思った以上に楽で、楽しくお金を稼ぐことができたのだ
それはもう、順調すぎると思うほどに
最初こそ選り好みはしていなかったが、当初考えていた目標金額を達成した頃から自分が興味を持った仕事しか請けなくなった
それでも仕事はどんどん来る
情報屋が不足しているわけでもない
しかし、それ以上に情報屋に仕事を依頼したいと思っている者は多かった
『娘の情報を下さい』『猫がいなくなりました』『金庫の暗証番号の解除方法を教えて下さい』『夫の浮気相手の情報を下さい』『企業の情報を下さい』
毎日送られてくる依頼メールの仕分けをする
「ったく、情報屋は探偵じゃないのに。猫なんてその辺の探偵に頼めよな!」
コレはいらない。
こっちは保留…そうやってメールを仕分け終えて保留のメールを読み返す
「んーっと、娘の情報かー…コレも探偵行きなんだろうけど、渡すには惜しい額なんだよなぁー。情報渡すだけで10万円。結構でかいよなぁ」
再び保留にメールを分ける
「金庫の暗証番号はー…ちょっと額が低いんだよなぁ、しかもコイツ泥棒した金庫とかの可能性もあるし…警察行きでいっかな?」
このメールは事件フォルダへ移動
「うーんと、企業の情報?コレはそこそこ良い額だな」
とりあえず、キープ
「あとはくだらない依頼ばっかりか」
一括削除
「さって、受ける依頼に返事を送りますか」
これが日常だった
(拍手掲載日:2009.10.08)
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