[07]


「まだ自己紹介していなかったね。俺は斉藤武、HNはNightよろしくね」

軽い口調で言われたが、HNを聞いた瞬間耳を疑ってしまった

Nightと言えば情報系アングラでは知らない人はいないというくらい有名人のはずだ

プライドも技術も高いその人が何故俺にあんな小さな依頼くらいで用があるというのだろう?

「Nightなら、俺くらいの情報屋に依頼した人くらい簡単に割り出せるんじゃないの?」

軽く挑発的に言った

「それができたらこんなことしていないよ。君、依頼メールを簡単に取れないようにしてるくせに」

あの仕掛けに気づいたということだろう。

さすがNightだ

「あの仕組みを解読するより、俺に直接聞くほうが手っ取り早いと考えたってことはそんなに切羽詰まってるんですか?」

時間をかけたら誰でもアレを解くことはできるはずなのに誘拐なんかする理由はきっとそれしかないだろうと確信を持ちながら尋ねた

「まぁ、そんなところかな。それより、依頼者を教えて欲しいんだけど」

「依頼なら報酬について詳細を教えて下さい」

何のメリットも無く話すわけがない

例え、ココから帰すことだとしても立派な報酬の1つになる

「そうだね。何も説明していなかった」

そう言うと、机の上に置かれていた紙を手に取り、数枚広げてこちらに見せた

「ココにサイン済みの小切手がある。報酬はコレに好きな金額を書いてくれればいい」

「へぇ?いいんですか?1億とか書いちゃうかもよ?」

「別に構わないよ」

「それだけ、この情報が重要ということですか」

出された小切手を観察して、目線をNightに戻す

「じゃあ、この小切手なんて要らないので、話した後の俺の身の安全の保障と無事に地元まで帰ることを条件にして下さい。俺はどうしてもスーパーに行かないといけないんだ」

今日食料品を買い溜めなければ、1週間生活することが難しい

家にある食料は昨日全部使い切ってしまったんだ

「…じゃあ、小切手に加えて、それも報酬ってことにするよ。最初から君に何か危害を加えるつもりもなければ、危ない状態になったとすれば、ちゃんと守るつもりだったからね」

しっかりと足場は固まったように思う

さて、全く乗り気ではないけれど仕方が無いから答えようか

答えない限り帰れないようだしね



(拍手掲載日:2010.01.02)



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