[19]

「ただいまー」
昼頃家に帰ってきた
パタパタとどこからか走ってくる音が聞こえる
音の元は2階だったようで楓が走って降りてきた
「おかえり!どこ行ってたんだよ!昨日は帰ってこないし!」
「あ、うん。そのまま泊まってきちゃったから」
「心配したんだからね!誘拐されたんじゃないかとか喧嘩に巻き込まれたんじゃないかとか!!」
いくらなんでも誘拐は無いだろう。
喧嘩に関しては否定できないけど・・・でも、その場合は喧嘩を起こしている方の可能性も少なくは無い
補導だけはされないように気をつけよう
「大丈夫だよ。子供じゃないし。でも、連絡しなくてごめんね。ご飯食べたら眠くなっちゃってそのまま寝ちゃったんだ。気づいたら真夜中で連絡しようにも迷惑な時間だったからさ」
「それでも連絡して欲しかったな。まぁ、いいや。ほら、リビングに行こう。母さん達も心配してたんだよ」
楓にそう促されてリビングに入った
「ただいま」
リビングで寛いでいる両親にそう声を掛けた
「おかえりなさい。心配してたのよ。特に楓がだけど」
クスクス笑いながら出迎えてくれる母に
「ごめんなさい。気づいたら真夜中だったから連絡できなくて。でも楓が一番心配してたんだ」
「もう!母さん!余計なこと言わないでよ!!」
「あら、本当のことじゃない。でも、私達も心配してたのよ」
「次からちょっとだけ気をつけるよ」
これ以上続くとこれから無断外泊できなくなりそうだったので先にそう言っておいた



母が紅茶をいれてくれたのでそれを飲みながら昨日聡広と出かけた森林公園の話をした
「へぇ、そんなに自然が綺麗なところだったんだ」
楓がそんな風に話の感想を言ったので
「楓も行ったこと無いの?」
と聞いてみた
「一度小学校の遠足で行っただけかな。だから、アスレチックで遊んだ記憶とか友達が途中ではぐれて迷子になった記憶とかしか無いんだよね」
思い出して少し笑っている楓に、「そうなんだー」と相槌を打つ
「そうだ!来週どこに遊びに行く?」
話題を変えるように突然手を打ってそう聞いてくる楓に、そういえば昨日そんな約束をしたなと思い出す
「そうだなー・・・この辺にどんな遊び場があるのかとかさっぱり分からないんだけど、楓はどこか行きたい所ある?」
そう聞き返すと、楓も少し悩んでいる
この近所で遊ぶ場所は少ないのかもしれない
「遊園地?映画?動物園?」
「映画はともかく、女の子とのデートは別として遊園地や動物園って男二人で行く場所?」
そう聞くと
「いいじゃん。デートしようよ」
と言われてしまった
楓と『デート』。兄弟の仲を深めるためだ。嫌だとは言わないが少しその言葉は使いたくない
「デートって・・・兄弟で遊びに行くだけなんだからデートじゃないだろ?」
そこだけは強調しておく
「うーん。それもそうか」
あっさりと引き下がったのであまり深い意味は無かったのだろうと納得し
「で、どこに行く?」
と問いかけた




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