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結局その日のうちに決まらず、また後で考えようということになった
この辺りではどこで遊べるのかも分からないので圭介にでも相談してみようかな?と考えながら教室へと向かう
今日は月曜日なので皆早く登校するため、廊下は生徒で賑わっている
何故月曜日は来るのが早いのかというと、学校の方針で月曜日は普段より5分早く門が閉まるらしい
普段は居ない生徒も月曜ばかりは時間に余裕を持って学校に来ていた
「美希也、おはよう」
靴を履き替えていると後ろから声を掛けられた
「おはよう。圭介」
少しずれて場所を空けながら挨拶する
靴のロッカーは隣同士なので少しずれないと圭介が上履きを取れなかった
「最近は朝から美希也が居るから変な感じだよな」
そう言ってからかう圭介を軽く小突いて
「何それ!前まで散々朝から来いとか言ってたくせに!」
以前は大体平日も土日も関係なく遊んでいた美希也にとって、大人しくしている一定の期間を除き、学校に朝から居ることは珍しいことだった
「いやいや、いいことだなーって思ってさ。俺は嬉しいんだよ?朝から美希也と戯れることができるからさ」
「そんなに俺をからかって遊びたいわけ?いいよ、今日は圭介と口聞かない」
フイッと顔を逸らせて怒ったことをアピールする
「え?ちょっと美希也、そんなつもりで言ったんじゃなかったけど、悪かったよ。お願いだから口は聞いて。じゃないと俺が暇じゃねぇか」
「知らないー!でも、どうしてもって言うなら今日は許してあげる」
「どうしても美希也と話したいんだよ。お願い!」
そう言って手を合わせる圭介に「しかたないなー」と言って許す
これもいつもの戯れの一環だ
たまに「何アイツ。偉そうに」とか知らない人に言われるけど気にしない。コレは圭介との遊びだから
でも、やりすぎると圭介を好きな人から睨まれるのが少し難点



圭介はどちらかと言うと「カッコイイ」部類で、ファンが多い。
『男子校』だから同性しかいないこの学校でのアイドル的存在の1人でもあった
進学校のくせに暇な奴が多いのか、見目が良い人にはファンクラブなんていうものが存在しているらしい
近くの女子高の女の子を見て喜ぶなら分かるが同じ学校の男を見て女のようにキャーキャーと騒ぐのはよくわからない
このファンクラブのおかげで圭介を好きなやつからたまに忠告を貰ったりもする
それに加えて一部、俺と楓が兄弟だと知っている奴からも忠告されたことがある
どうやら楓はこの学校の「可愛い」部類での人気が高いらしい。一度「楓様はカッコ可愛いよね!」とクラスのやつに話しかけられ曖昧に相槌を打った記憶がある
正直どこが良いのかよく分からないが、兄弟なので悪くは言えない



自分は彼らとはかけ離れ、平凡な容姿をしているので全くこういう騒ぎには関係ない位置にいるので客観的に「大変そうだな」としか思えないが
実際に追いかけられている彼らの精神的疲労は理解できなかった
たまに圭介に「大変だね」と話しかけると
「美希也も眼鏡を外していつもみたいに髪の毛をセットしたら同じ気持ちを味わえるのに。なんなら俺がしてやろうか?今すぐに人気者になれるはずだぞ?」
と目が据わった状態で言われたので、それ以来心配しても言葉にしないように気をつけている
所詮自分の身が一番可愛いのだ
誰が好き好んでそんな危険なことをするか!
一応自分の容姿の自覚くらいはしている。だからこそ眼鏡を掛けているのだ



今日も朝から圭介のファンらしき人が圭介に絡んでいるのを横目で見て、うんざりしながら心の中で「がんばれ」と応援しておいた




20話と21話の間に[授業]という話が入ります。こちらはそこまで本編に重要ではなかったのでWeb拍手にて公開中です。興味のある方は御覧下さいませ


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