[22]

図書館に入ると圭介とは別れてまず聡広と一緒に過ごすようになった奥の自習室を目指した
この自習室は他の自習する机と違い、部活などでも使えるように話したりできる部屋になっている
「こんにちはー」
いつものように自習室の扉を開くと、入り口に近い机に聡広と楓がいた
「楓?」
「あ、美希也」
机の上に広がっているのは英語のノートと教科書だ。
それらから推測するとどうやら英語を教えてもらっているらしい
「今分からないところを教えてもらってたんだけど、美希也も聞きにきたの?」
「え、いや・・・そういうわけじゃないけど・・・」
どう答えていいのか分からず言葉を濁した
「もうすぐ中間試験だし、ちゃんと覚えておいたほうがいいと思うよ。美希也は初めての中間試験で分からないかもしれないけど、この学校の試験凄く難しいんだから」
実を言うと、有名進学校だから試験が難しいのは覚悟しているが、そこまで勉強に励もうとは思っていなかった
「そうだね。入試も難しかったし覚悟はしてるけど、俺は赤点ギリギリでいいよ」
「えっ?!ダメだよ!赤点取ったら夏休みは補習だよ?それに・・・美希也、赤点が何点か知ってるの?」
赤点とは一般的に30点とか50点以下くらいじゃないのか?
「この学校の赤点って、通常80点なんだ」
「80点?・・・それ赤点じゃないだろ」
赤点の基準は学校それぞれなのだから、そういう場合も大いにあり得る
しかし、認めたくはなかった
「ちゃんと説明すると、50点以下が強制補習組で夏休みは毎日学校で基礎からのクラスで80点以下が夏休み期間中1週間から2週間の補習組なんだって」
夏休みを満喫するためには80点以上を取らないといけないらしい
「まぁ、選択科目を除く10科目合計で800点以上を取れば良いらしいけどね」
さらりと「合計ならどうにかなるよ」と言わんばかりの言い方に内心どうにもならないと思いながらどうするべきか考えていた
夏休み。どうせ暇なのだから毎日補習でもいいかもしれない
「やる気出ないなー」
今から頑張ってもどのみち補習は免れそうに無いだろう
「因みに、今のところ夏休み全日補習になった人はいないんだって。一応50点以下になったら追試があって、追試までは先生達のスパルタ指導があるらしいんだけど、そのスパルタに夏休み全てを捧げたくないって皆頑張るらしいよ」
どんな補習だか少し気になるが、スパルタは確かに嫌だ
「50点以下は取らないようにしないとな・・・」
「そのためにもしっかり勉強はしたほうがいいよ」
ね?と念を押して言ってくる楓にやはり優等生は言うことが違うなと思う
圭介もしっかりテストに出そうな場所はチェックしていた
「じゃあ、そういうわけで美希也も一緒に勉強しよう!」
ほらほら、といつの間にか楓に鞄を取られ教科書やノートを広げられる
「えーっと、ココか。あれ?美希也ってノート取らないの?全く書いてないじゃない」
あまり人にノートを見られるのは好きじゃないが見られてしまったのだから仕方が無い
「必要最低限のことは書いてるよ。単語の意味とか宿題の範囲とかはね」
「これで分かるの?」
こんなノートは理解できないという風に顔を顰めている楓からノートを取り返し
「別に試験対策用のノートじゃないし、自分が理解できたら良いんだよ」
これ以上追求されるのが嫌でさっさとワークを取り出し自習する空気を作った
本当になんで一緒に勉強することになっているんだろう?
折角の聡広と話せる時間なのに
ムスッと不貞腐れながらも渋々勉強を始めた




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