[23]

暫く黙っていた聡広だったがパラパラとノートを捲ると
「こんなに書いてないとは思わなかった」
とポツリと呟いた
間違いなく俺のノートのことだろう
「授業中、ちゃんと俺の話も聞いているか?」
「授業は聞いてるよ。ただ、あまり理解はできないけどね」
聡広には申し訳ないが、聞き取り難い発音をするのだ
それが改善されればもう少しは授業を聞く気になると思う
「浅木、今のままじゃ50点は難しいんじゃないか?」
ハッキリ言われたが実際難しいかもしれないとは感じているので「そうかもね」と答えた
リスニングが出たら絶対落とさない自信はあるのに・・・
こう見えて英会話はできるのだ
ただ、ライティングが苦手なだけ。なぜかって、単語のスペルが分からないから
しかし、試験では全て書く問題。
この単語の読み書き次第で点数が決まってしまうのだ
隣で楓が聡広に色々質問している。そんな風に質問できることが今は凄く羨ましかった
さすがに単語のスペルが分からないと質問することはできない。意味ならともかく・・・
仕方なく分からない単語は電子辞書で引いて答えを書いた
「あれ?美希也が勉強してるなんて珍しい」
突然後ろから声がしたので振り返ると本を片手に圭介がいた
「圭介が本を読むのも珍しいよね」
そう言い返すと
「たまにはね」
と言われた。
「へぇー英語?美希也、英語は得意じゃなかったっけ?」
こちらの手元を覗いてそう言う圭介に
「得意じゃないって。単語力が無いのは圭介も知ってるだろ?」
「あぁ、書けないんだっけ?全く、損な奴だなー」
「ほっとけ!」
これ以上、横から色々言われたくなくてフイッと顔を背けた
「はいはい。単語に関しては今度試験対策をしてあげるから」
「えっ?」
思っても見なかった言葉に圭介を見る
「だから、今度美希也の部屋に行きたいなー」
にっこり笑ってそういう圭介に「黙れ!」とデコピンをお見舞いした
何故か少し前から俺の部屋に入ることが仲間内で話題になっている
誰も入らせたことは無い部屋だからこそ、ここまで執拗になっているのだろうが何故入りたいのか理由は理解できなかった
「いってー!いいじゃん。部屋に入れてくれたって」
「どうせ賭けでもやってるんだろ?お前かタキどっちが先に俺の部屋に入れるかって」
「あ、バレた?なぁ、頼むよ。みんなタキに賭けてるから今俺が勝つと賭け金総取りなんだよ。美希也にも半分渡すからさ」
「俺で賭けをするなよ!全く。あ、でも試験対策は約束だからね」
「美希也の部屋でならいくらでも勉強教えてあげるって」
「いいよ。『俺の部屋』に招待してあげる」
約束する
でも、招待するのは自分の部屋に違いは無いが家ではない。
繁華街にひっそりと佇む店の2階に自分専用の部屋を与えられていることを果たして圭介は分かっているのだろうか?
「ずるい!僕もまだ美希也の部屋には入ったこと無いのに」
突然横からグイッと腕を引かれる
どうやら楓に抱き寄せられたようだ
「ビックリした。楓、急にどうしたの?」
「ずるいよ美希也!沢田を部屋に招待するなんて!勉強なら僕が教えてあげるから!」
だから、圭介を部屋に上げるなと言う楓になぜ、そこまで必死になっているのかは理解できなかったが頷いておく
「う、うん。分かったから放してくれない?」
「約束だからね!」
念を押された
「チェッ、折角賭けは俺の勝ちになりそうだったのに。恨むぜ?高里」
どうやら圭介を部屋に上げなくてよくなりそうだ
しかし、その代償はでかい。
補習は免れることができるのか少し不安になってきた




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