[03]

数日はおとなしく過ごした

学校が終わってしまうと暇になる。

圭介と遊びに出かけたりもしたが、圭介もそこまで暇じゃないらしく今日は一人で暇を持て余している

何もすることが無いので図書館へと来ていた

普段は見ないような本を数冊借りる

ぼーっと本を眺めていると部活か何かだろう。図書室が突然にぎやかになった

注意しても良かったがそっと図書館を抜け出す

家で本を読むつもりで本を持ち帰った



「あっ!」



階段を下りる途中で足を滑らせる

落ちる!と思い次に来る衝撃に身を構えるが一向にその瞬間は訪れなかった



「えっ?」



「危ないだろ!ちゃんと前を見て歩け。特に階段なんだからな」

咄嗟に通りかかった英語の講師が俺の体を支えてくれたのだろう。本が数冊階段の下に散らばっていた

「あ・・・ありがとうございました」

「いや、それより気をつけて歩けよ」

「はい。失礼しました」

講師に一礼して散らばった本を拾う



「楓、最近何かあったのか?」



そう言った講師にふと目を向ける。

自然と目が合った。

自分の名前じゃなかったが、その名前には覚えがあったからだ。

自分と双子の兄弟、高里楓がこの学校に在学している。

苗字が違うのは俺は祖母に預けられていた為、母方の名前だからだ。



「先生、俺は浅木美希也って言うの。高里楓じゃないよ」

「浅木・・・?人違いか。悪かった」

「いいえ、慣れてますから。それじゃあ、助けてくれて本当にありがとうございました」

もう一度礼をして今度こそ本気でその場を去る。

双子の兄弟は本当に人気がある。

もともとココの学校の中等部に通っていたらしく極わずかな外部生に比べて持ち上がりの方が人数が多いせいか知り合いも多い。

噂では、楓は中等部の生徒会長だったらしい。

顔見知りも多いようだった。幸い今のクラスはほとんどが外部生のみのためすぐに馴染めた

そう言っても、少数との付き合いを好むため最低限の話はしても自分から絡んでいくことはしなかった



「楓・・・か。親しいのかな?あの先生と」

ふとそんなことを思ったが確かめることなどしない

最近まで離れていた兄弟とは、『兄弟』というより同学年の知り合いという程度の付き合いしかしていない

できれば関わりたくはなかった




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