[04]

「ただいま」

のんびりと帰ってきたので、楓はもう帰宅しているようだった

「おかえり。美希也」

丁度二階から降りてきた楓が出迎えてくれた

「・・・ただいま」

返事をしないのも何か変な感じをしてちゃんと返事を返した

「今日はハンバーグと南京の煮付けだってさ。早く着替えてきなよ」

「・・・わかった」

できれば一緒に食べたくなどないが、今日は相手もいない。

仕方なく頷き自室として貰った部屋へと急いだ

パタンと扉が閉まる音を聞きながらそのままベッドに横になった



一体いつまでこんな生活をしなければいけないんだろう。

楽しいこともない。

つまらない生活

ただ・・・学校に行って、快楽を求めて遊ぶ

無意味な日々。

希望が持てない今の自分なんて生きている意味も価値もない・・・

そう思って残るのは虚しさしかなかった





ぼんやりと夜の道を歩く

通い慣れた繁華街へと向かう道とは逆方向のコンビニへと歩いていた

夕飯を食べ、家族で何か話していたがそれには加わらずにそっと抜け出した

いつものことなので何も気にしていないだろう

こっちに来た頃から彼らと『家族』という実感が湧かず一歩引いてしまっていた

それが今になって大きく距離として現れている。あと数年の我慢だと思っても、その数年が長く感じた

本当に自分が高校を卒業して自立できると誰もが認めたら、彼らと一緒に居なくてもいいのだろうか?

義務教育は中学までなのだから別にもう1人でも生きようと思えば生きていける年齢なのに。

まぁ・・・生きる気力なんてないけれど。

何もする気になれないのだから仕方がないと思う





「美希也!」

声をかけられた

振り返ると楓が居て驚いた。

「どうしたの?」

「どうしたの?じゃ、ないよ!気づいたらまた居ないんだもん。みんな心配したんだからね」

「・・・別に。そこまで子供じゃないんだし。大体心配って何の心配だよ」

「何って家出とかさ。こんな夜に一人で外に出て、その気がなくても誘拐されちゃったりとかしたらどうするの?」

「んなことあるわけねぇだろ?誘拐されるような子供じゃないし」

「この辺、変な人多いからさ。気をつけたほうがいいよ」

そう忠告されても本気なのか冗談なのか分からなかった

「ところで、ドコに行こうとしてたの?」

そう聞かれて、外に出た目的を思い出す

「コンビニ。アイス買いに」

「そうだったんだ。次から声掛けてよ。一緒に行くからさ」

「だから一人でも大丈夫だって言ってるだろ?一応護身術くらいの心得はあるよ」

しかし、体格差のある者数人に飛び掛ってこられたら避けきれる自信は全くなかった

そういえば楓も何だかんだ言いながらしっかりとした肉付きをしているな・・・と思う

部活か何かしているのだろうか?もしかしたら本気で掛かってこられたら楓にすら勝てないんじゃないかと不安になった

とりあえず。本気でジムか格闘系の教室に行こうと決める

「この辺じゃその護身術でも危険だから言ってるんでしょう?少しは人の話を素直に聞き入れなよ」

「・・・気をつける」

素直に認めるのは癪だがこれ以上言い争っても仕方がないのでそう適当に相槌を打った




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