[06]

最近特にすることもなくぼんやりと放課後を学校で過ごす日々を送っていた

昨日借りた本を返すために図書館に行きまた借りてくる

その繰り返しだが、平凡な日々にもちょっとずつ変化があった



「よぉ、浅木?」

「こんにちは」

未だに双子の楓との見分けがついていないのか疑問系で声を掛けられる

似てるといっても髪の色が同じなだけで他は違う。更に美希也は眼鏡を掛けているので見分けやすいはずなのに毎回聞いてくるのには何か訳でもあるのだろうか?

「今日も図書館か?」

「えぇ、暇なんでね。何か用ですか?」

あの日この階段で会ってからほぼ毎日この階段で会うようになった高林先生にそう聞いた

答えはいつも「会いたかっただけ」とかふざけてくるのがなければ普通の先生だと思う

「別に今日は偶然だよ」

「そうですか。では失礼します」

そう言って通り過ぎる

ただ会って通り過ぎるだけ

その繰り返し。

別に本当に意味なんてないのかもしれない

しかし、そろそろこんな日々にも飽きてきていた





翌日圭介を誘って久しぶりに繁華街に遊びに来た

ココに来るときは眼鏡を外している。今日は更に髪の色もスプレーで変えた

「圭介、今日は何やる?」

いつもお決まりのゲーセンにでも行こうかとしているとどこかで喧嘩をしているのか叫び声が聞こえた

「どーする?」

挑発するように聞いてくる圭介に頷き、声のする方向へ向かった

案の定、喧嘩のようだ

「あれってうちの学校の生徒じゃない?」

まだ遠目だが制服を見れば分かる

どうやら生徒指導の先生と生徒が言い争っているようだ

「まずいな。今日は帰るか」

見つかって何かと言われると困る

踵を返し急いで繁華街を出てお互い帰路に着いた





しかし、真っ直ぐ帰る気になれず近くの公園に立ち寄りただぼんやりブランコに座って月を見ていた

1時間くらいぼんやりしていたかもしれない。突然目の前に影ができた

「こんな時間にココで何してるんだ?」

そう言われて相手の顔を確認する

「高林先生?」

「うちの学校の生徒か、もう9時だぞ。早く帰りなさい」

「もうそんな時間なんだ。分かりました」

ブランコから立ち上がる

「あれ?楓・・・?いや浅木か?」

「それが?あぁ、生徒指導で報告するのに名前が必要なんでしたっけ?」

「いや、別に報告するつもりはないけれど・・・髪の色が違うから分からなかったよ。何やってたんだ?」

「何もしてませんよ?ただ、ぼんやり暇つぶしをしてただけ」



早く時間が過ぎればいいのに

ただ願うのはそれだけ。



「暇つぶし?だったら楓とゲームでもすればいいんじゃないか?双子なんだろ?」

自分から言った覚えはないから誰かに聞いたのだろう。

「そういう考えは浮かばなかったな。今度誘ってみようかな?」

そんな気はないが一応そう言っておく

「夜も遅いから気をつけて帰れよ」

高林先生とはそこで別れて今度こそ真っ直ぐ帰った




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