[07]

次の日、図書館に行くと珍しく高林先生が居た

「こんにちは」

とりあえず挨拶をしておく

「丁度良かった。浅木、この資料整理を頼まれたんだが手伝ってもらえないか?」

そう言って山積みにされた本を指す

「・・・いいですよ。暇ですし」

他に用もないので引き受けることにした

「浅木は毎日暇なんだな」

そう言って笑う高林を見て

「どーしてもやりたいと思うことがないだけ。それに、あと数年の我慢だし」

「我慢って?」

「数年したら何もやりたくなくてもやらないといけないことができるでしょう?それを待ってるの」

「自立したいってことか?」

「そういうこと。別に義務教育じゃないんだから家を出て一人暮らししても良いはずだけど、それを言ったら止められた」

「だろうな。何が不満なんだよ」

「不満?全部かな・・・なんで思うようにさせてくれないんだろうっていつも思う」

「ふーん。で、何がしたいんだ?」

「さぁ?まずはしたいことを探す旅にでも出ようかな?」

少しは楽しくなりそうじゃない?と茶化してみる

「じゃあ旅に出ればいいじゃないか」

まさかそう返されるとは思わずビックリした

「・・・無理だよ。止められる」

「何故?やりたいことを探すことは誰だってやるだろう?同じことだよ。遠くへいけないなら近場で探せばいい」

「近場で?」

「そう。例えば・・・本でどんな職ならどういうことをしているのかを知る。これも立派なしたいことを探す旅じゃないか?」

「そうかもね」



そんなことを考えたこともなかった



「知ったら実際に見に行ってみればいいじゃないか。お店や映画館や本屋いたる場所に実際に働いている人はいるんだから」

「・・・そうだね。そういうの、面白いかも。先生ありがとう、今度やってみるよ」



ちょっとだけ「時間つぶし」が有効な物になりそうだ





先生のアドバイス通り色々調べてみた

今まで知ってるようで知らなかった世界が多い

今日も図書館に本を借りに行った。



「浅木」

廊下で声を掛けられる。高林先生だ

「また図書館で資料整理ですか?」

この先にあるのは図書館しかないからそう見当をつけて聞いてみた

「いや、今日は浅木に用があったんだよ。こないだ服飾関係で興味があるって言ってただろ?」

「え?あぁ、うん。それがどうかしたんですか?」

先日会った時にそんな話をしたことを思い返す

「知り合いにデザイナーが居るんだけど話したら是非話をしてみたいって言っててさ、興味があるなら色んな情報が手に入るチャンスだろ?」

「先生にそんな知り合いがいた事に驚きですけど、実際に話を聞けるのは確かに色んな情報が手に入るチャンスですよね」

「良かったら明日の夕食を一緒にどうかと思ってさ、何か用はあるか?」

「俺が毎日暇なことを知っててそう言うならかなり意地が悪いですよ」

むぅっとした顔を作りちょっと不機嫌をアピールする

「悪かったよ。じゃあ決まりだな。明日の放課後講師室に来てくれ」

「分かりました。それでは」

久しぶりに『約束』をした





明日の夜は予定有り。






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