[11]

好きな場所ということで、『ライームズ』にやってきた
勿論特大フルーツパフェをアズマに奢らせる
「よくそんな甘ったるい物食べられるな」
向かい側に座るアズマが目線を逸らし、コーヒーを飲みながらそう言った
「んー?美味しいよ?アズマも食べる?はい、あーん」
スプーンにバニラのアイスとクリームと苺のジャムを乗せて突き出すと顔を横に振り拒否された
因みに、敬語は店に入ったと同時に捨てた。元々敬語で話すような仲じゃないしね。
「ふーん。俺のあーんを拒否するんだ?」
「俺は食べさせて貰うより、食べさせたい派なんだよ。食わせてやろうか?」
ニヤリと何か裏がある笑みを返された
…うん。ろくなことがありそうにない。
「アズマにあーんされるくらいならあげない。それより、そろそろ教えてよ」
ぱくりとパフェを食べながら話を促す
「あー…あんま言いたくないんだけど、ココに居る以上危険だし教えておくか。最近、この辺が物騒なのは誰かから聞いたか?」
カチャリとコーヒーカップを少し横に退けて、アズマは両腕を机において少しこちらに身を寄せた
あまり人に聞かれたら困るのだろう。
自然と小声でのやりとりになる
「まぁ、聞いたよ。今日色んな所巡って調べたし。この街の不良が狙われてるんだろ?」
「それなら話が早い。じゃあ、その狙いの対象に俺達のような奴らも含まれてるのは知ってるか?」
「えっ?ナニソレ」
今日調べた話では不良に対してしか攻撃していないという内容しか聞いていなかったのに
「こっちは知らなかったか。実は俺の知り合いが昨日…その、捕まって」
「えぇっ?!捕まった?」
「コラ、声がでかい」
思わず大きな声を出してしまい、すぐにアズマに頭を押さえられる
「いちいち驚いて声を上げるなら悪いがこれ以上は言わないぞ」
「ご、ごめんなさい。大人しくしてるから教えて。俺にも関わりありそうだし」
「…そうだな。お前なんか特に狙われそうだから、知っておくべきだよな」
何もそんなに強調しなくてもいいのにと思う。
一応、この街のトップとして名前が広く出回っているのも自覚している
だからこそ、この街を狙うのだとしたら俺にも関わりが出るだろうと思うのだ
「順に説明するぞ」
そう言いおいて、改めて今回の件について説明してくれた
「まず、『楽園』というチームみたいなものを知ってるか」
『楽園』
知ってるも何もそこにはかなりお世話になっている
裏繁華街の治安を守る不良集団の名称だ。
治安を守る不良というのもおかしな話だが、実際のメンバーが不良ばかりなので仕方が無い。
『楽園』は不良チームというより、問題発生時に助けたりなど関わっても良いという有志集団なのでリーダーは居るが具体的なメンバー数や拠点は無いらしい
「知ってる。何人か知り合いはいるよ」
「知ってるのか…じゃあ、ケイとトワは知ってるか?」
「っ…知ってる」
ケイの名前が出て動揺しかけて慌てて隠す。
「…お前、本当に気をつけろよ。今回の件はその2人が特に狙われてるらしいからな」
「ねぇ、一体何があったの?皆狙ってるとしか言わないんだけど…」
具体的に一体何をしたのかが気になった
「なんでも、トワってヤツが以前ちょっと危ない橋を渡ったみたいでさ、その時に『楽園』がトワを助けたのが発端らしいんだけど」
危ない橋…言葉は濁されたけど、何か危険な取引か、事件かの中心に関わったということだろう
「その…トワが関わってた…要は、『楽園』が倒した敵みたいな奴らのことなんだけど、そいつらが逆恨みで今、トワと『楽園』関係者、不良達そしてこの街の俺達のように金稼いでるヤツを無差別に襲っている」
「…この街に出入りしてる若いヤツは無差別に襲ってるって感じなのか?」
「いや、ルールがあるみたいだ。奴らのトップは良心的だな。表側には手を出さない。裏側の奴らは容赦なく襲ってるみたいだけどな」
なるほど。表側は一般人も多く居る。
自分達に関わりがあり、恨みがあるのは裏側の人間。更に、裏側のヤツらなら何かあったとしても自業自得で片付けられる、警察も介入できない無法地帯だから。
「良心的…ねぇ…。本当、嫌だなぁ…。あれ?じゃあ、アズマが今ココに居るのは逃げてきたってこと?」
ニヤニヤと笑って尋ねると
「まさか。表側に居たのは情報収集のため。あと…『楽園』の奴らが来ないか探してただけだ」


『楽園』 今回のキーワードのようだ。



← Back    NEXT →

ページ一覧】【一言】【TOP】【HOME

Copyright(C) Shino komanami.All Rights Reserved.