[15]

作戦とは言いがたいが、自分達なりには一番楽な方法で問題を回避する手段を取った
「これで大丈夫かな…?」
「大丈夫だろ。稼ぐこともできるし、そういうのが好きな客も多い。一石二鳥じゃないか」
「うーん…俺は嫌だけどな」
考えた末の結論が、力が無いなら数で勝負。1対1の接客ではなく複数での接客だ
数が多ければそれで良いってもんではないと思うが、アズマがそれで納得してしまっているのでどうにもならない
「だいたい、襲うようなやつが1人で行動するかな?客と装って近寄って来ても行ってみたら数人居るとか、そういうオチっぽくない?」
「まぁな…とりあえず、今はそれで様子見でいいだろ?」
きっと良い案が浮かばなかったのだろう
そういう自分も言い返せるだけの案もない。
「分かった。じゃあ、それで緊急連絡まわしておくよ」
カチカチと携帯のメールを呼び出しウリ仲間にメール。
1回のメールだけで後は何もしない。
皆が勝手に回してくれる。
「それじゃあ、俺はそろそろ行くね」
時計を見るともう8時を過ぎていた
「じゃあ、送って行くよ。危ないだろ?」
そう言ってくれるアズマにニコリと微笑み
「ありがとう。でも、俺帰るわけじゃないからいいよ。送らなくて」
そう言うとあからさまに眉を顰める
「心配しなくても今は遊んでもないから。ただ、とある場所でバイトしてるだけ」
「バイト?」
「そう。飲食店のお手伝い。まぁ、今日はサボって出てきちゃったんだけどさ。それじゃ、またね」
アズマに会計を任せてさっさと店を出る
まだ何か言いたそうなアズマの視線を背中に受けているのを感じつつマスターの店に向かう為に近くの路地を一本中へと入った




ざわめく風を感じてふと上を見上げる
ビルが立ち並び入り組むこの界隈ではビルとビルを飛び越えて移動する者が居ても不思議ではない
今もそのバカなことをしてるヤツがいるような気がして上を見た
その瞬間、肝が冷える
「うわっ」
人が落下してくる
どうしよう、受け止めないと…
受け止められなければ、そいつは死ぬ。



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