[19]

静かに走り出す車に仕方なくシートベルトを締めて、ゆっくりと体を座席に任せる
「美希也、最近どこに居るんだ?お母様も楓も心配してるぞ」
聡広の口から家族の話など聞きたくもない
「そうなんだ…」
ざっくりと会話を切る
しかし、聡広はあれやこれやと小言を重ねた
「義務教育ではないと言えど、未成年であることに変わりはない。まだ親の保護下にいるんだから、せめて居場所くらい教えておきなさい」
「携帯電話の番号は知ってるんだから、用があれば掛けてくるでしょう?別に、携帯の電源を切ってるわけじゃないし」
パカッと携帯を開く
着信履歴を見ても、家からの連絡は1件もなかった
「そうだとしても、一言くらい言っておくべきじゃないか?」
「そうかな?無駄な気がするんだけど」
何処へ行くか、何をしているか…知りたいなら聞いてくるはず。
それをしないのは、俺に興味がないから。
だから、俺は好きにする。そのせいで迷惑を掛けているなら別だけど、そうじゃないなら好きにさせてほしい。
「連絡がムダなわけないだろ?まったく…次からはちゃんと言うように!」
先生口調での注意にうんざりしながら「はーい」と答えておく


慣れた様子で近くに車を停めて、家へと着いた
そして当然のように一緒に家の中へと入ってくる
「こんばんわ」
「あら、聡広さん…と、美希也?お帰りなさい。珍しい組み合わせね。どうしたの?」
「繁華街の交番で偶然会ったので、一緒に帰ってきたんです」
聡広が母の言葉にそう答えた
「交番?!何があったの?補導?」
「まさか。ただ、ちょっと路地に入ったところで上から怪我した人が落ちてきて警察に助けを求めただけ」
補導されるようなことをしたなんて思われたくなくてそう言った
「人が落ちてきたって、大丈夫なの?」
「何とか受け止めたし、気絶してたけど、心臓は動いてたから…その後どうなったかは救急車で運ばれたから分からないけど」
「そ、そう…心配だから、あまり、危ないことはしないでね」
「…うん」
出歩くのを止めなさいと強制はしない。
でも、母の表情が不安だ、本当は危ない場所に行ってほしくないと言っている


危ないことをするな…か。
でも、もう既に遅い。俺は関わってしまっているから




← Back    NEXT →

ページ一覧】【一言】【TOP】【HOME

Copyright(C) Shino komanami.All Rights Reserved.