[20]

真っ先に風呂に入りリビングへと戻ると父が帰ってきていた。それと、楓と聡広がソファで何か話している。
やっぱり…まだ、辛いな。


聡広と楓が相思相愛だとはっきりとしたあの日、きっと彼らは『恋人』になったのだろう。
わざわざ、自分がお膳立てしたような物だ。
自業自得。そう言われると、そうかもしれない。


「美希也、帰ってきてたのか」
父にそう声を掛けられて、ハッとする
いけない。ぼーっとしてた
「うん。ただいま」
「今までで一番長かったな」
「そうだっけ?まだ2週間も経ってないよ」
テーブルに座り父が夕食を食べる隣でコップにお茶を注ぐ
「まったく。田舎でもいつもこんな感じだったのか?」
「んー?まぁ、そうだね。大体、幼馴染の家に居たし」
今まで居た田舎でもそれなりに遊びまわってりしていたし、家に2週間帰らないことなど多々あった。
2週間どころか1ヶ月以上居なかった時もあったかもしれない
「そうか。今はどこに居るんだ?」
「今?うーんと、先週は友達の家で、今週は知り合いの家に居たよ」
「そうか。あまりご迷惑を掛けないようにな。うちにも呼んでいいから」
「…うん。ありがとう」
珍しく、父と話した気がする。
コレって、もしかしなくても心配…してくれてるってことだよね?
「2週間近く帰ってこなくて、心配した?」
恐る恐る、聞いてみた
「当然だろう?これでも、お前の父親だ。息子が何処で何をしてるのか…束縛するつもりはないが、最低限のことは気になるさ」
「そっか…」
俺のことなんか興味ないと思っていたのに。。
ちょっと嬉しい
「ふふっ、そっか」
ちょっとどころか、凄く嬉しいかも。
マスターに報告しなきゃ。


…ん?マスター?


あ、しまった。
家に帰るってマスターに言い忘れた!どうしよう、凄く怒ってるかも!
「ちょっと電話!携帯どこ行ったー?!」
さっき風呂に入った時にどこに置いたっけ?邪魔になるからって思って…あ、風呂場の近くにある洗濯機の上に置いたんだ!
バタバタと風呂場へと戻る。
そして発見した携帯電話。ピカピカと着信を示すランプが光っている
恐る恐る開くと
『着信:60件、メール受信:100通』
物凄い数の着信が入っていた。メール100通とか…誰?こんなに送ったヤツ!




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