[21]

ざっくりと着信を確認すると、予想通りマスターからの着信がほぼ全部で、最後の方に圭介とタキから数回入っていた
「やっちゃったなー…とりあえず、マスターから」
リダイヤルでマスターに電話を掛けると1コールで電話に出た
『美希也か?お前、こんな時間までどこほっつき歩いてるんだ!裏には遊びに行かないんじゃなかったのか?!』
「ごめん!連絡し忘れてた!実はさ、ちょっと厄介なことに巻き込まれて…」
と、夕方から今までのことを順を追って説明し、今は家に居ることを告げた。
『はぁ…まぁ、無事なら良かったよ。本当にお前は怪我してないんだよな?』
「うん…ちょっと腕が痛いけど、それくらい。少ししたら治るだろうし」
『…そうか。あまり痛みが引かないようだったら病院で診てもらえよ』
「うん。ありがとう」
心配してくれてるという、心地よい照れを感じて思わずクスクスと笑いを零す
「マスターは俺のお父さんみたい」
『…美希也なら、うちの子になってもいいぞ。大歓迎だ』
「ふふっ、それもいいなぁー。マスター厳しそうだけど」
『よく言うよ。俺の言うことなんかほぼ聞かないくせに』
「そうでもないよ?ちゃんとマスターには報告してるじゃない」
家族に話してないことだって、マスターにはついつい話してしまったことなんか沢山ある
本当にマスターは第二の俺の父親みたいな存在だ
「それじゃあ、また明日には戻るね」
『…暫くこっちに来ない方がいいんじゃないか?』
俺が狙われてることを言ったから心配してくれているんだろう。
でも…
「ココに居たら、もし、俺の居場所を探してココに奴らが来たとしたら…迷惑掛けちゃうから…」
何も関係がない家族まで巻き込みたくはない
マスターならいいのかと言われると…そういうわけじゃないけどね。
あそこなら、色々逃げ場もあるし、マスターも裏と表の間で店をやってるくらいだから弱くない。むしろ、強い方だと思う。
お店で酔っ払いに絡まれたこととか何度もあるけど、いつも簡単に倒してしまうんだ
『そうか、わかった。とりあえず、来るなら気をつけて来いよ』
「うん。ありがとう。おやすみ」
電話を切る
今の現状を話して、少しだけ落ち着いたと思う。


少しほっこりした気持ちでリビングに戻る。
タキと圭介にはメールで済ます。
「何かあったの?」
戻ってくると母、頼子にそう尋ねられた
「んーん。別にーただ、ちょっと嬉しいことがあっただけ」
心配してくれる人がいるってことが、凄く嬉しかったんだ
だから、にやけてしまうのは仕方ないじゃない。




← Back    NEXT →

ページ一覧】【一言】【TOP】【HOME

Copyright(C) Shino komanami.All Rights Reserved.