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夏休みに入って早くも3週間が経過した
この間に色々あったが、今はとにかく圭介と夏休みを楽しく過ごすことを最優先事項に置いている
圭介は圭介でそれなりに忙しく、毎日俺に構ってくれるわけではないが、この街にはマスターやタキが居る
この街に戻ってくると自然と相手を探してしまうかと思っていたが、保護者達がそんな暇など与えてくれずに今は健全に楽しい日々を過ごせている
と、言ってもこの繁華街に戻ってきてからまだ2・3日しか経っていない
それまでの間は圭介の家で厄介になっていたのだが、さすがに何週間もは申し訳ないと感じてマスターの所に頼りに来たのだ
マスターは最近姿を見せなかったことで心配してくれていたのか、軽く小言は貰ったが、好きなだけ居ろと言ってくれた
以前、ココを拠点にしていたので、その時から俺専用の部屋を1つ作ってくれているのだ
本当にマスターには感謝してもしきれない
「あ、ミキじゃないか!最近姿を見せないとマスターも心配してたんだぞ?何してたんだ?」
常連客の一人が店に入ってくる
「こんばんはー、奥の席へどうぞー」
質問には答えずに座る席へと誘導し、お冷を持って行くついでに、常連客のコーダさんの向かい側に座る
コーダという名前が本名なのかは知らないがこの人は以前もよく俺の心配をしてくれていた人の一人だ
基本的にココの店の常連はマスターの影響かは知らないが俺のパーソナルデータをそれなりに把握していて、気さくに話しかけてくれたり心配してくれたりする
「俺、これでも本業があるからさ、ここ1ヶ月はそっちの方が忙しくて来れなかったんだよね。コーダさんは俺が来なくて寂しかった?」
にこりと微笑み、営業用の顔でそう話しかけると
「当然だろ?本業ってことは、7月だし試験の季節だな。ココに来てるってことは、成績は大丈夫だったか?」
と普通の流れのように返されてしまい若干表情が強張る
「コ、コーダさん俺が学生って知ってたんだ」
「は?どーみても学生だろ?まぁ、一時期はフリーターとかかと思ってたんだけどな、マスターにたまに勉強教わってたじゃないか」
「あ・・・」
言われて見れば前にどうしても解けなかった宿題をココでマスターに教えてもらった記憶がある
「そう言えば、そうだったね。それより、メニュー決まった?」
メニューを開いてそう聞いた
「まだ見ても無いのに・・・そうだなぁ・・・ミキのオススメは?」
常連だからメニューは大体決まっているだろうに、俺のオススメを聞いてくる
「うーん。今日はきっとハンバーグとか美味しいと思うよ」
「ふーん?何かいつもと違うのかい?」
「だって、俺が手伝ったんだもん。美味しいに決まってるでしょう?」
ニヤリとそう笑い返す
「ははっ、確かに、それは美味しそうだ。じゃあ、今日はそれにしようかな。あと、ビール」
「了解」
マスターにメニューを伝える為にカウンターへと戻る
その途中もまた一人店に客が入ってくる
「いらっしゃいませー、奥の席へどうぞー」
「ミキ!久しぶりだなー。どうした?最近全く見掛けなかったけど」
「んー?ちょっと忙しかったからかな?最近また暇になったんだ」
「なるほどなー、あ、とりあえずビール頼むよー」
「はーい」
ビールのオーダーを紙に書いてカウンターにある注文票を挟む場所に置いていく
「オーダーここに挟んどくよー」
カウンターの中に居るマスターとマスターの手伝いをしている圭介に声を掛けてビールを持ってコーダとさっき入ってきた客、ハスのところに行く
「はい、ビールねー」
ハスとコーダの前にビールとグラス、そしてハスにはお冷も置く
そして軽くまた雑談
普通のお店だと許されないんだろうけど、マスターのお店だからこそのコミュニケーション
この店に来る人の多くは、こうして誰かと話したくて来ている
俺が、ココにマスターと話したくて足を運んだように



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