[3]

「じゃあ、美希也、俺はそろそろ帰るな」
夜9時頃、客はまだまだ残っているが圭介はこの後家の用事があるらしい
「うん。暫くこっちには来れないんだよな?」
確認する為にそう聞くと頷きと
「本当にゴメンな!どうしても外せない恒例行事でさ」
「あぁ、うん。仕方ないし気にしないで。俺は夏休みいっぱいはマスターのところでお世話になろうと思ってるし」
「そうしろ。その方が安心だしな」
心配してくれる圭介の気持ちが嬉しくてニコリと微笑み
「うん。心配してくれてありがとう。大人しくしてるから、気にしないで行って来て」
と手を振った
「そう素直に送り出されるとなぁ・・・マスター、美希也のこと本当に頼みますよ。相手釣りに行かないように見張ってて下さいね」
しっかりとマスターに釘を刺していく
「わーかってるよ。本当、心配性な保護者だな」
「本当に心配ですから。じゃあ、美希也そろそろ行くけど、もし俺が居ない間に相手釣ったら俺、何するか分からないからな?」
「本当に大人しくしてるってば!それに、今はそんな気分じゃないからやらないよ!」
「このまま卒業できるようにしような。それじゃあ、またな」
バタバタと慌しく店を出て行く圭介を店の外まで見送る
「待ってるからねー」
バイバイと手を振って
見えなくなる頃店へと入る
「アイツは本当にお前の保護者になったな」
「親友だよ」
"保護者"と皆は言うけど、俺と圭介は親友だ
冗談で"保護者"という表現を使うことはあるけど、圭介はやっぱり俺と同じ高校生でまだ大人じゃない
ただ、ちょっと俺に対して過保護すぎるだけ
出会いが出会いだし、お互いがお互いを気に入っている。そういう点が他の人より過保護になるのかも
俺も、もし圭介が困ってることがあるなら何よりもまず優先して手を出してしまうと思う


「マスター、明日は俺だけだから少し忙しくなるねー?」
この数日、俺と圭介がマスターの店の手伝いをしていたので、茶化すようにそう言うと
「お前らがいなくても店はしっかりと運営できるけどな」
と言われてしまった
確かにそうだけどね。最初の頃なんて俺達が若干邪魔してたような気もするし
「そうですねー・・・」
否定もできず、少し拗ねながらそう言うと一気に笑い声が上がる
どうやら客も俺達の会話を聞いていたようだ
至るところから
「ミキはよく働いてる」とか「マスターも嬉しいくせに」という声が聞こえた
それにマスターは苦笑で返し
「ミキ、休憩しろ」
と本日オススメのハンバーグを出してくれる
店も落ち着いたし少し遅い夕食タイムだ
「はーい。ありがとー」
カウンターの一番端に座りハンバーグ定食を食べる


賑わう店内、そしてこの街
いつもと変わらないこの光景
この街は誰にでも平等であり、時に残酷だ



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