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この店の朝は昼頃から始まる
「マスター、買い物あるー?」
午後1時すぎ、店の清掃が終わりやることもあらかた片付いたところでマスターにそう尋ねた
「お前が行くのか?」
「そのつもりなんだけど」
蒸し暑い太陽の下へと出るのは少し嫌だが、それでも何かできる事が今の俺には助かっている
他の事を考えなくていいから
「わかった。じゃあ、コレを頼む」
そう言ってリストを渡してくれる
今日の食材だろう
「はーい、行って来ますー」
元気にそう言って店を出た


この街の昼間は穏やかで、普段なら比較的落ち着いた雰囲気の場所だ
しかし、今は夏休み
遊びの場を求めた学生が多く普段とは少し違った一面を見せている
「ミキ!」
裏通りから表通りへと出たところで声を掛けられたので声のするほうを見る
聞き覚えのある声だからきっと知り合いだろうと思っていると予想通り、見覚えのあるヤツが居た
「久しぶりじゃん。しかも昼間に珍しい」
そいつはタキでも圭介でもない。
会ったのは数回だけの知り合いレベルのヤツだけど、圭介と繋がりがある不良だ
悪いヤツではないのは分かっているので警戒はせず、「やぁ」という感じに挨拶のつもりで軽く手を上げる
「久しぶり。でも、昼間でも来る時は来るよ?」
にこやかに微笑んでそう返すちそいつも笑って
「けど、そんなに来ないだろ?それより、今日はケイと一緒じゃないのか?」
周りを見てそう聞いてくるので、彼の中では俺と圭介がワンセットになっているのだろう
「うん。今日はあいつ用事があるからいないよ」
「ふーん?で、ミキはどこに行くんだよ?」
「買出し」
軽く紙を振ってみせる
「買い物ねぇ・・・一緒に行ってやろうか?」
珍しい申し出だ
しかし
「おつかいくらい子供じゃないんだから一人で行けるよ」
少し拗ねたような表情を見せて
じゃあね。と手を振って彼とは別れる
いや、別れようとした
「お前一人じゃ不安だから一緒に行く」
そう言って強引に手を取って歩き出したので、軽く引きずられながら慌てて抵抗した



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