[23]

「あの…さ、何で、繁華街なんかに行ってるのか、聞いてもいい?」
躊躇いながらも口を開いた楓がそう聞いてきた
何で繁華街に行くのか?そんなことを聞いてどうするんだろう?
そんな不良の溜り場のような場所へ行くなんて真面目な楓から見たら信じられないってことだろうか?
「何でって、そうだなぁ…知り合いもいるし、面白いから…かな?」
別に繁華街じゃなくてもいいはずなのに繁華街へと足を運ぶのは、マスターが居る場所であり、俺と同じ半端なヤツや仲間が居るから…
そして、そんな奴らを含めて様々なことが起きるのを見るのが面白いから…かな?
俺のことも他のやつから見たら、俺が他のヤツを見て笑うように、俺を見て笑っているのだろう。
俺達がいる立ち位置はそういう場所だから。
「知り合いって…沢木やこの間来ていたタキって子?」
「圭介やタキも含めて…ね?色んなヤツがいるよ」
「そう…さっき、高林先生に聞いたけど、美希也繁華街裏に行こうとしたんだって?あそこがどんな場所か知ってる?あの奥は本当に危ないんだよ?」
楓が声を重ねる
しかし、繁華街の裏なら楓より俺の方が詳しいだろう
「知ってるよ?不良が沢山居て、警察もなかなか介入できない場所。毎日殺人事件が起こってる…なんて言う噂もあったっけ?」
毎日殺人事件はさすがに起きていないが、警察がなかなか踏み入れられない場所というのは当たっている
どうして警察が介入できないのか…なんて、原因を突き止めようとは思わないけど
「知ってるなら何でそんな危険な場所に行こうとしたの!」
怒っている楓に、何でそんなに怒っているのか理解ができなかった
「もう、そんな場所に行かないでよ。本当に、心配なんだから」
心配してくれてるんだ。確かに、良い話は聞かないし「危ない」というのも分かる。
それは、分かるけど…
「約束できない」
あそこはもう俺にとって、馴染みのある場所だから。
裏街に行かなければ、マスターとも会えないし。
「何で?繁華街裏なんて、危険しかない場所だよ?興味本位で足を踏み入れたら、何されるか分からないよ」
そう言えば、交番では後々色々聞かれるのが面倒で気になったからという話をしてたんだっけ?
そう考えながら、ちらりと聡広を見る。
全ての情報源は楓の隣に座るこの男だ。本当に余計なことを喋ってくれる
軽くため息をつきながら
「…警察には、裏側が気になったからと言ったけど、本当は、あの向こうに知り合いがいるから。だから、もう行かないという約束はできない」
「えっ?!美希也!そんな場所に知り合いなんて…大丈夫なの?知り合いに会うだけなら、別に繁華街以外で会えばいいじゃない?」
確かに楓のいう言葉はどれも間違っているなんて思わないけど
「悪い奴らばかりが居ると思わないでよ。それに、繁華街でしか会えない人だっているんだよ」
闇を抱えているヤツの多くはあの場所に囚われているヤツも多い。
タキ…とかね。
「ねぇ、もう眠いんだけど」
そろそろこの一方的な説教に嫌気が差してきた
「美希也…なんで…」
「自分の身は自分で守るよ。ねぇ、俺の人生だよ?楓に何か迷惑掛けたかな?あの場所が危ないと注意するのは分かる。でもね、強制はされたくない。俺はあの場所がどういう場所かも分かってるし、最悪事件に巻き込まれてもいい覚悟はある。だから、放っておいてよ」
はっきりとした拒絶を口にすると楓は俯き何も言えなくなった


ハッキリ言ったんだから、分かったでしょう?俺の言いたいことは
だから、もう放っておいてよ…





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