[24]

「美希也、そんな言い方…ないんじゃないか?」
今まで黙って俺達の会話を聞いていた聡広がそう言った
拒絶はしたけど、そんなに酷い言い方だったかな?
「楓は、美希也のことを心配して言ってるんだぞ?」
「だから『もう二度と足を向けない』と約束しろって?できないと分かってる約束なんてしても意味がないでしょう?」
これから…明日も行くつもりなんだもん。
それに、今の俺の状態だとココに居る方が危険だ。
ココより繁華街でたまに出現するという情報を流しておく方が都合がいい
「…繁華街に行くのも、暇つぶしのためか?」
質問を変えた聡広に、そう言えば聡広には「暇つぶし」の話をしていたんだっけ?と思い出す
「勿論、暇つぶし…というのもあるよ?でも、ただ暇を潰すだけなら別に繁華街じゃなくてもいいでしょう?だから、今回はそうじゃない。純粋に繁華街から出ない知り合いが居るから。ただ、それだけ」
「…そうか。あの場所に入り浸るようになったのは…その、夏祭りのことがあったからか?」
聡広の言葉に一瞬固まる
まさか、あの時のことを持ち出すなんて思わなかったから
「まさか、全く関係ないよ。大体、俺があの場所に初めて足を踏み入れたのは4月だよ?」
「4月…」と楓が小さく呟いていたけど気にしない。
ココに来て間もない時期からあそこに足を向けていたとは思わなかったんだろうと勝手に結論づけて
「ねぇ、うぬぼれないでよ?高林先生は俺のこと、何も知らないのに」
楓よりももっと俺の情報は少ないはずだ
それなのに、何でも知ってるつもりにならないでよ。
「さて、本当にもう寝るから出て行ってよ」
今度こそ二人を部屋から追い出した


気持ちよく寝ようとしていたのに
凄く不快だった。
ねぇ、貴方達に俺の何が分かるっていうの?
聡広は楓が心配するから、俺を心配しているのだろうか?それとも、俺が自棄を起こしているとでも思ったから?
どちらにせよ、不快なことに変わりはない。
放っておいてよ。
あと少しだけ。
そう、あと数年したら、俺は………


何で、何で俺だったの?
あの時、何で楓じゃなくて俺だったの?俺が邪魔だった?楓だけ居ればよかったの?何で…
昔は理由も分からず酷く落ち込んだ覚えがある。
今、理由を知っていても…こうしてたまに落ち込むんだ。だって、楓と俺は一緒に生まれてきたはずなのに、全く違う環境だから
楓が俺の環境や状況を知ったら羨ましいと思うのだろうか?俺が、楓の環境が凄く羨ましいと思うように…


あぁなっていれば…なんて「もしも」の話。
考えること自体、意味がないのに…




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