[26]

嫌な夢を見た
たまに見る幼い頃の夢
何で僕じゃなきゃいけなかったか…なんてバカなことを考えていた幼い頃
あの時は、本当に凹んだなぁ…
結局俺は「浅木美希也」として生きることになった。
昔は『分家』なんて嫌だという感情しかなかったし、それでよかったと安心したけど、でも、今思うと楓が本当に羨ましい
自由な楓が本当に羨ましかった


7:30

枕元においてある携帯のディスプレイに表示されている数字を見てため息をついてベッドから降りる
全く寝た気がしないけど、さっさと出て行かないと楓達に余計なことを言われそうだと思い着替える
今日も外は天気がよくてとても暑そうだった


リビングへ行くと両親が朝食を食べているところだった
「あら、美希也おはよう。早いわね。今用意するわね」
「あ…うん。ありがとう。あ、おはよう」
慌てて朝の挨拶をして、朝食の準備の為に席を立った母、頼子を目で追った
何か手伝った方がいいか?
そう思いキッチンに行こうとしたら父に止められた
「美希也、ココに座りなさい」
「え?あ、はい」
なんとなく敬語で返して父の隣に座る
「もう行くのか?」
父は見ていた新聞を畳み、机に置きながら俺にそう聞いてきた
「…うん」
ココに居たら迷惑が掛かる。それに…
今朝見た夢を思い出し、体が強張った
親子と言えど、10年近く別れて過ごしていたのだ。今更すんなり『家族』だなんて、無理な話だったのかもしれない
「別にどこに行こうが美希也の好きにすればいいと思っているが、帰らない日は早い時間に連絡を入れなさい」
「…分かった」
「で、今日はどこに行くんだ?」
…今、俺は物凄く不自然な反応をしているだろうに何も言わずに会話を進めてくれる
「今まで居た知り合いのところ。昨日何も言わずにこっちに来たから」
「そうか」
丁度そこで母が朝食を持ってきてくれた
「はい、今日は卵焼きとサラダとご飯と味噌汁よ」
「ありがとう」
朝はそんなに食べないけど、出された物を残すつもりはない。
食べれるかな…と少し不安になりながらお箸を手に持った




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