[27]

楓達が起きてくる前にと少し急いで家を出た
家を出る前にちゃんと母にも暫く外泊することを伝えてある。
帰る日が決まったら連絡しなさいと言うだけで見送ってくれた。


眩しい光に目を細めながら静かな繁華街の中へと入る
まだ早い時間だからか開いている店もバラバラだ
入ってすぐの道を一本中へと入りすぐにまた路地道へと入る
裏へと繋がる道の1つだ
この道を進むと裏通りに面する道へと出る。
マスターの店とは違う場所に出るけれど、まだ時間も早いのでもう少しだけ散歩するつもりで裏の道を進む
今は朝なので誰も居ないこの通りだけれど、夜には不良達など裏の住人で賑わっている
普段は行かないような場所も、この時間帯は通ることができるのだ


昨日不良達に「襲われた」と聞いた場所を見て回る
どこもこの街では有名な族が溜り場にしている場所だった
誰も居ないので詳しい話は聞けないが、今はただ散歩しているだけであって情報収集しているわけじゃないので人が居ないのはどうでもいい。
しかし…
実際に歩いていて、気付きたくないことに気付いてしまった。
色んな人に聞いた話を照らし合わせると襲っているのは表通りに近い入り口付近から奥へと続く場所に向かって行っている
昨日の人も同じく襲われていたのだとしたら…
裏通りも中間地点までは荒らされたことになる
マスターの店は表通りと裏通りの中間地点にある
そこが狙われることはないだろうが、この裏通りもあと半分で荒らされ尽くされるというわけだ。
残り半分
しかし、その奥の部分こそ、この裏繁華街では暗い闇となっている


「この法則が見当違いならいいけれど…」


ぽつりと呟いた声は思いのほか響いた声は誰かに聞かれることは無く、路地の奥へと吸い込まれるように消えていく
ビルとビルの隙間から見える青空を仰ぎ見て、一つため息を零した


「マスター!おっはよー!」
チリンと風鈴の音を響かせて扉を開く
時刻は10時。随分歩き回ったなと思いながらマスターの店に帰ってきた
「おはよう。今日は来ないかと思ってたぞ。来たならさっさと手伝え」
と普段と変わらない様子でそう言うマスターに嬉しく思いながら
「はーい」
と返事を返した




← Back    NEXT →

ページ一覧】【一言】【TOP】【HOME

Copyright(C) Shino komanami.All Rights Reserved.