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今日はケーキを焼いてみた
喫茶店のメニューとしては定番なのに、この店では求める客も少ないからとメニューには載せていない。
けれど、折角なのだからとこの休みのバイト中に俺は色々喫茶店のメニューを教えて貰っている
散々貶されながらだけど…


「美希也、そろそろ生地冷めたんじゃないか?」
「え、もう?じゃあ、生クリームでデコレーションしなきゃ」
店の窓拭きを終わらせて、キッチンへと戻る
今日のケーキはショートケーキ
半分に切ってクリームと苺を載せてデコレーション
隣に先生がいるので綺麗にできた
「すごーい!売ってるケーキみたい!」
「売り物なんだから当然だろう」
感動していると軽くツッコミが返ってきた
でも、生まれて初めて作ったケーキがこんなに綺麗にできるとやっぱり嬉しい
「それじゃあ、もう1個あるから今度は一人でやってみろ」
そう言ってもう1台スポンジケーキを渡される
確かに練習は大事だけれど、1つ作るのに集中しすぎて、もう限界だったのに…
「ほら、今日は昼間も開店させるんだろ?もう時間が無いぞ」
と脅された
俺がどうせなら昼間は表のお客さんを招き入れたら?と言ったことで、今日から昼の2時から4時も開店するか。と言うことになった
この2時間は俺が料理を作って出すらしい
本当にそんなことをして良いのだろうか?と不安に思うけれど、折角覚えたことを披露できるならと少し楽しみにしている
だから…
疲れたとか言えるわけも無く、もう1台頑張ってスポンジと生クリームと格闘する
難しい。
さっき簡単にできたのに
真ん中で綺麗に切るの凄く難しいよ!
「おー、でも結構綺麗に切れてるよ」
そう慰めてくれても、こんなに歪んでしまっているのに…
落ち込んでいるのが分かったのかマスターは笑いながら
「そこまで酷くないから安心しろ。それより生クリームの方が心配だけどな」
「うぅ…生クリームも難しいのに…」
シロップで生地を叩きその上に白い生クリームを載せていくスパテラの扱いが少しだけ慣れてきたのかうまくクリームをのばすことができた
「さっきより綺麗になったな」
「本当?!」
生クリームを絞って丸い形にしたものを上に載せ、最後にイチゴでトッピングして完成
「充分、綺麗に仕上がったじゃないか」
「うん!売り物になる?」
ちょっとドキドキしながらそう尋ねると
「そうだな…まぁ、合格点だな」
商品として認めて貰う事ができた
ヤッタ!コレ、お店に出していいんだ!
自分ひとりで最初から最後まで作った物が売り物として並ぶのはこんなに嬉しいことなんだとこの時初めて知った。




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