[30]

教えてくれた奴にありがとうとお礼を言い、折角なのでケーキをあげて、マスターに連日で申し訳ないなと思いながらちょっと出かけてくる許可を貰ってさっきドッペルゲンガーが現れたという辺りへと行ってみた

朝と違い賑やかな路地を進むとガシャンと大きな物音が前方から聞こえた
音から判断すると、その辺の店のビンケースか何かだろう
「はいはーい、ちょっと通るよー」
見知った不良達が誰かを囲んでいるのを見て、堂々と人を割って中へと入っていく
「は?あ、ちょっ…」
「あ?何…は?ミキ?」
グイッと退かした奴らが俺を凝視している
「俺以外に誰が居るの?それとも、ちゃんと証を見せた方がいいのかな?」
ニヤリと彼らに笑い掛けるとそれぞれが顔を見合わせた
これはどうやらこの中心部にいるのがドッペルゲンガーかと内心げんなりしながら前に進む
「はい退いてー!通行の邪魔だよー!ココは集会を開いちゃいけない区域だよー?わかってるー?」
ようやく中心へと出た
この場の全員の視線を一斉に浴びる
「よぉ、久しぶりだねぇ?元気してたー?カノエちゃん」
小さいグループながら強い奴らが集まっている不良集団のリーダーであるカノエとはそれなりに面識と交流があるので砕けた口調で話しかけた
「ん?あぁ、久しぶりだな。最近顔出してないって噂のミキちゃんじゃねぇの」
「まぁねー、保護者が五月蝿いからあまり奥には行ってないからね」
クスクス笑いながらそう答えてカノエと楓達を見る
「ドッペルって聞いて予想してたけど…本当に居るとはねぇ…。危険ってわかってるのに何で来たの?」
楓と聡広を睨みつけると楓の肩がビクッと震えた
「ぁ…」
「大体分かるけどね?俺を迎えに来てくれたんだよねぇ?」
睨むのをやめてにこりと笑う
「ミキ、こいつらと知り合いなのか?」
カノエが俺にそう聞いてきたので頷き返し
「そぉー、ついでに言うとぉー、一般人だよぉ?」
「ゲッ、一般人かよ。そいつら」
あからさまに嫌そうな顔をしたカノエに笑いながら
「だからさぁ、見逃してくんないかなぁ?ね?」
とお願いしてみると、カノエは「チッ」と舌打ちしたあと「行くぞ!」と回りの不良達に短く指示を出して奥の路地へと進んでいく
「ありがと!カノエちゃん」
「どーいたしましてぇー。つか、次会う時またチャン付けで呼んだら手加減しないからな!」
「それは無理な相談かなぁ…あ、そうだ。お礼にいいこと教えてあげる」
小さく手招きをするとカノエは少し不機嫌そうな顔をした後こっちに来てくれた
「最近この辺で不良が狙われてる事件があるの知ってる?」
そう聞くと「あぁ」と頷きが返ってくる
「実はその事件についての憶測なんだけど…次狙われるの、カノエちゃん達が縄張りにしているこの辺が危ないと思うんだよね…ってことで、気をつけてね。あ、安全地帯はこれも憶測だけど入り口付近だよ」
「はぁ?どういうことだよ?」
うまく伝わらなかったのか説明を求められどう答えるべきか考える
あまり下手なことを言って煽るのだけは避けたいところだ
「あー…まぁ、俺の考えでしかないからさぁ、信じる・信じないはカノエちゃんの自由だよ。今回の事件、結構派手にやられてるし、俺達も部外者じゃないからちょーっと調べてみたんだよねー。そしたら、入り口付近から奥へと向かってるなーって思って。それで、次来るならどこだろう…って思ってみたらさ」
「ココだったわけかよ」
俺の言葉をついでため息交じりに吐き出された言葉に頷き返す
「まぁ、見逃し代くらいの情報にはなるでしょー?」
じゃ、気をつけてねと手を振ってカノエと離れ、楓達を連れて安全な場所を求めた



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