[31]

「まーったく!危ないって自分で説教しといてわざわざ来る?バカじゃないの?」
俺は細い路地道を進む途中、楓と聡広に説教をしていた
「絡まれた時の対処法を何も考えないで入ってくるなんてバカとしか言いようがないよ!本当に!ココは常識がない不法地帯なんだから」
「いざとなれば警察呼べばいいと思ったし、まさか本当に絡まれるとは思わなくて」
楓がモゴモゴと言い訳をしている
甘い!誰かが助けてくれるなんて思ってるところが甘すぎる
「二度とココには足を向けないほうがいいよ。ココは本当に警察なんか入れないから。国の機関も全く関与しない、国内にある外国のような場所なんだ」
「…この国の中でそんな場所が本当にあるわけない」
「ココがそんな場所なんですよ。貴方達が知らなかっただけで、こんな場所世界の何処にだって存在してる。ただ、ニュースとかで取り上げられないから知らないだけだよ」
自分達の知っていることが全て正しいと思ってはいけない
知らないことなんて世の中沢山あるはずなのだから
「さて、俺の案内はココまで。この先を真っ直ぐ行くと表通りに出られるよ」
路地の先を指差す
「美希也!一緒に帰ろう。ココは危ないよ!俺は、美希也を連れて帰るつもりで来たんだから」
「嫌だよ。今日はちゃんと外泊許可も貰ってるし、それに俺一人なら何とでもなる」
楓達がいると足手まといだからさっさと出て行けという俺の気持ち、察してくれないかな?
「何でだよ!何で…」
「黙って」
路地の向こうに人の気配を感じて咄嗟に楓の口を手で塞いだ
「まずいな…この辺人は通らないはずなのに」
わざとそういう道を選んだのに…いや、だからこそ、遭遇してしまったのだろうか
「本日最初の獲物ハッケーン!」
細い路地に声が反響する
「弱そうな奴らだな」
「まぁ、最初だし、準備運動くらいにはなるんじゃねぇのー?」
ケラケラ笑いながら近寄ってくる奴らに一歩ずつ後ずさる
ヤバイ。本当にヤバイ!
どう見ても俺達全員あいつらと喧嘩できるような奴らじゃない
逃げないと…
楓と聡広の腕を引いて走る
当然不良達も追いかけてきているけれどそれに気にする余裕は無い
どこだ、どこに行けば奴らを撒ける?
どこに行けば、あいつらを倒してくれそうな奴らがいる?
奥へ行き過ぎるとそれはそれで危ない。かと言って「楽園」に助けを求めるのも難しい。彼らの狙いは「楽園」なのだから
「まずいっ」
考えながら走っていると誤って行き止まりの道に入ってしまったようだ
目前に壁が立ちはだかり焦る
「追いかけっこはもう終わりー?」
ニヤニヤと笑いながら俺達を壁へと追い詰める不良達
どうしよう、本当に逃げ場なしなんですけど!!



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