[32]

「しっかし、結構入り組んだ道入って来たねぇ…でも、道に迷ったみたいだけどさぁ、誰かに助けを求めようとしたの?」
「答える義理はないよ。それより、帰り道大丈夫?ちゃんと来た道、覚えてる?」
余裕は無いけれど、そんなことを敵に見せるわけにはいかないので余裕があるフリをしてそう尋ねた
「…帰り道?んなの、適当に歩けば外へ出てるだろ」
「フフッ、そぅ。頑張ってね?まぁ、ココからなら半日彷徨えば外に出れるかなー?」
ニヤリと笑い返す
どうやらちゃんと道を覚えていないようだ。コレはある意味チャンスでもある
「何が言いてぇんだよ」
「べっつにー?ただ、ココまで着いて来たってことはこの街の人じゃないなーって思って。でも、ココで遊ぶならココのルールはしっかり守ってよねぇ?郷に入っては郷に従えって言うでしょう?」
「ハッ、生憎ココのルールに従うつもりはねぇんだよ。てめぇは大人しく、俺達にやられておけばいいんだよ!」
最後の言葉と同時にこちらに向かって拳を突き出してくる
それを軽く避けて
「残念ー。じゃあ、俺達も君達に対してルールを守る必要はないね。困っても助けてあげないから」
さて、うまく丸め込むことはできなかった…
どうやってこいつらを撒こうか…
不良達は3人、俺達も3人…
何とかなるかな?
彼らの攻撃を何とか交わし、たまに足蹴りや足払いなどを掛けながらゆっくりと移動する
ようやく走れそうなだけの空間があいたところで、楓達に
「走れ!」
と短く声を掛けて一番手前の路地に入りまた走る
そろそろ走るのも辛くなってきた
ふと楓達は大丈夫だろうかと様子をうかがうと息が全く切れていなかった
そうだ。楓は運動部に所属してたんだっけ…
チッ、聡広も息切れしてないし…辛いのは俺だけか
細い道を何本か入ったところで不良達を撒くことができた
はぁ…本当に今日はツイテナイ
「はぁ…何とか…撒けたね…」
はぁはぁと肩で息をしながら楓達に声を掛ける
「ねぇ…いつもこんな危険なことしてるの?」
心配そうに楓がそう尋ねてきた
「いつもこんな鬼ごっこしてるわけじゃないよ。あいつらはココの人間じゃないし。今、この街でちょっと事件が起きてて、それ関係。本来なら俺はあんな奴らと鉢合わせることなんかない場所にいるよ」
マスターの店なら安全だから…外に出ない限りあんな奴らと出会うはずはないのだ
「さ、行こう。いつまでもココに居て見つかったら大変だから」
そう促して路地を出る
今度こそ、楓達を表側へと送り届けるために


「よぉ、ミキ。こんなところで何やってんだ?」
次から次へと現れる人達に、俺は自分で楓達を外へと送り届けることを諦めた



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