[35]

ついた場所は工事中のビルだった
そのビルの地下がやつらの城らしい
いくつもの扉があるなか、一番奥の扉が開かれ、入るように促された
俺とアズマが中に入ると扉が閉じられる
俺達を囲っていた不良達はどうやらこの中には入れないようだ
「よぉ、待ってたぜ?」
正面のソファーにゆったりと座っている男がそう言いながら銜えていたタバコを離し煙を天井へと吹き上げた
「へぇ、そいつがアズマの子?で、あの街のNo.1?あ、お姫様っていう異名があるんだっけ?」
スラスラとそう言うそいつの言葉にとても違和感を感じる
「お姫様?」
さすがにそんな風に言われたことはない…はずだ
「姫なんだろ?街の物が守っててよそ者はなかなか顔を拝めないって有名な」
「まぁ、街のNo.1だから当然だろ?それより、コレで役者は全員揃ったな」
俺が口を挟む前にアズマがそう言った。
……『役者は全員揃った』それは一体どういうことだ?


改めて部屋を見ると室内には俺達とソファーの男以外に圭介とタキ、それに『楽園』の奴らが数名居た
皆縛られているが一応意識はあるようだ
「タキ、大丈夫?」
タキに近づきそう声を掛けると頷き返してくれたがその動作すらも辛そうだ
「あぁ、そいつは姫とアズマと同じなんだっけ?そいつは悪いことしたなぁ」
全く悪いと思っていない、むしろニヤつきながらそういう男に酷くイラつく
「アズマ、何でこんな場所に来たの?」
こんなヤツにわざわざ付き合う理由を教えて欲しいと思いながらアズマに問いかけた
「そんなの、終わらせるために決まってるだろ?」
そう言ってフッとアズマが笑う
え、何でこの状況で笑うの?
きっと今キョトンとしたマヌケな顔を晒しているだろうけど、何か問いかける前にアズマにグッと抱き寄せられた
「え、ちょ、ちょっと!アズマ?!」
「俺が触るのはいいんだろ?よいせっと、ちょっとの間大人しくしてろよ?」
じたばた暴れて抵抗したが、その抵抗も空しくアズマに抱っこされてしまった
姫抱っこ…ではなく、片手で持たれている感じ
ちょっと、いくらなんでもコレは傷つくんだけど!
「約束だ、お前の相手をしてやるよ」
「約束ってナニ?」
思わずアズマに聞き返すと「後で教えてやるから今は黙ってろ」と頭を撫でられた
ちょっと、色々分からないんだけど!
ココまで連れて来ておいて蚊帳の外状態な現状に不満を抱きながらとりあえず今は様子を見ることにした



← Back    NEXT →

ページ一覧】【一言】【TOP】【HOME

Copyright(C) Shino komanami.All Rights Reserved.