[37]

テーブルにオセロを移動させ始める準備をする
「そういや、二人の賭けるものを確認してませんでしたけど、なんですか?」
基本的にトップに仕掛ける勝負は賭けるものがある。
トップの座であったり、その他のものであったり…様々だけれど、賭けるものがあるのだ
「あぁ、俺が勝ったらアズマは俺の物になるっていう約束をしている」
佐賀がさらりと言ったが、思わず驚いて佐賀をじっと見てしまった
「なんだよ」
「あ、いえ。アズマがそんな勝負するなんて思わなかったので。それで、アズマが勝ったら?」
「俺が勝ったらココに居る奴らはこいつを含めて全員俺の下僕になってもらう」
「…それは無理だろう」
さすがにそれは認められないと却下する
「自分達の所有するもの同士でないと認めません。土地はいいけど、人は駄目。意思があるんだから」
そう言うと、
「じゃあ、俺が勝ったらこいつらを警察に突き出す…でいいよ」
「…まぁ、それならいいか。それじゃあ始めましょう」
開始の合図と共に、あらかじめじゃんけんでどちらが先にやるかを決めてあったので、佐賀が1枚オセロのプレートを黒を上にして盤上に置いた
1枚白が黒へと変わる
あと俺の役目は盤上で不正が行われないか、監視をしながら勝敗を見届けるだけだ
「それじゃあ、そろそろ今回の件を最初から説明するか」
パチッとアズマが盤上に白を置きながら言ったので、ひとつ頷いて
「納得できる説明をお願いね」
と視線は盤上に向けたままアズマに言った
まだオセロは始まったばかり。この勝負が終わるまでまだまだ時間はありそうだ


「一番最初のことの発端は前にも話したけど、トワってやつにココの不良が絡んでたところを『楽園』が助けたことで『楽園』に逆恨みを持ったやつらが街をめちゃくちゃにしてるんだけど、それには裏があるんだ」
「裏?」
「あぁ、こいつがそもそも、今回の話を大きくしやがった張本人なんだけどな」
そう言ってアズマは佐賀を指差した
「ふーん…って、ことは、アズマが気にいったとかでアズマを引きずりだすために…とかそういうこと言っちゃう?」
「そんなところだ」
「げっ、マジなの?」
そんなことじゃないといいなと思いながら言ったのにあっさりと肯定されてしまいげんなりする
それじゃあ、『楽園』や俺達街の者が襲われたのはとばっちりのようなものだ
「もともとは、俺のチームの下っ端がよそで喧嘩してきて負けたのがキッカケで始まってるんだから、俺のはついでだ」
「いや、お前の一言でお前の下っ端どもは動いてるんだから結局はお前のせいだろうが」
佐賀とアズマが言いあいを始めたが、だんだんどうでもよくなってきた
「つまり、佐賀さんの下っ端が『楽園』に負けて帰ってきて、それじゃあ佐賀さんのチームの面目が立たないから、やり返しに来たけど、その時に佐賀さんはアズマが気に入ってしまって、『楽園』を潰すついでにアズマを探すために街の片っ端から街の奴らに暴行を加えて行ったってことだね」
簡単にまとめるとそういうことだろうと思いながら言うと頷きが返ってきた
ばかばかしい。
「あとは、アズマを見つけたけど、アズマはすんなり佐賀さんのところに来なくて、今回のゲームをすることになったってとこ?」
「そんな感じだな。けど、ゲームを仕掛けてきたのは佐賀だぜ?何で知ってたのか不思議だけどな」
佐賀がこのルールの存在を知っていたことにビックリする
街の者でももうほとんど知られていないと聞いたのに、街の者以外の者が知っているなんて…
「まぁ、知り合いにそのルールについて聞いたことがあったんだよ。調べてみたらアズマは有名人だったからな。使えるだろうと思ってたんだ」
パチッと盤にまた1枚プレートが置かれる
盤上では現在佐賀がやや優勢に見える
「なるほどねぇ…」
パチッとアズマが1枚プレートを置く。左下の角をアズマが取った
これでこの後の展開がまた分からなくなる
「まぁ、ようするに。今となっては、俺達はお前ら二人に巻き込まれただけってことか」
これだけ大事にしておいて、結局は佐賀の我儘でした…なんて、納得できない。
ココはアズマに勝ってもらって、こいつらを…いや、佐賀を警察に突き出さないと皆の気が済むわけがない
盤面を見ると、まだ若干黒が目立った



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