[39]

余計なことをしてこの場を悪化させるのも得策ではないので、ココは放置して外へと出ようとした、その時
ざわざわと部屋の外が賑やかになる
この部屋に居なかった奴らが戻ってきたのだろう
「『楽園』ならいいですが、違うと厄介ですね」
ちらっと警官を見てそう呟くと警官もため息をついている
どうなるかくらい分かっているのだろう
「いっそのことあの部屋に隠れておきますか?明日の昼くらいに全部片付いてから帰った方が楽そうですよ?」
「いや、何言ってるんだ。君を拉致した加害者なら強制的に捕まえればいい」
「うーん?それは無理ですね?俺は合意の上でここにきてますから拉致じゃないし。それに、仮に拉致だったとしても、届け出ませんよ?そういうルールですから」
はっきりと拒否すると、警官は苦笑いをしつつ
「やっぱり君も街の住人なんだな」
と確認してきた
「えぇ、一応『お姫様』らしいですしね。レア者扱いされましたよ」
数時間前に初めて知った異名だが、あれだけ周知されていたらきっとこの警官も知っているだろうと思い言ってみた
「君があの『お姫様』か、今回の姫は深窓の姫だから滅多にお目に掛れないと有名らしいね」
「単純に行動範囲が狭いだけですけどね。って、姫って何代も居るんだ?」
今回の姫と言ったということは前の姫も居たのだろうと思い聞いてみた
「まぁ、街のNo.1を指すものだからね。君がそうだとは思いもよらなかったからビックリしたけど」
警官がそう言ったところで扉が開いた
入ってきたのは…知らない奴らと『楽園』の奴らだった
あれ?両方?
「ミキ!大丈夫か?」
タキが心配そうに俺に駆け寄ってくる
「うん…って、俺寝てただけだし」
安心させるように笑いかけるとタキは安心したように笑い返してくれた
「心配したんだよー!あいつら何か勝手に喧嘩し始めるし!あ、今は別室に放り込んできたから安心して」
「いやいやいや、喧嘩止めたならさっさと警察突き出しなよ。今回、それを決めるために俺呼ばれたようなもんなのに!アズマは?大丈夫?」
「アズマ?大丈夫なんじゃない?取っ組み合いの喧嘩をココで始めたから別室に放り投げたけど、まだ喧嘩続いてたし」
見当違いな回答をするタキに軽く頭を押さえながら
「誰でもいいから、アズマの救出に向かってやって。放っておいたら確実に手遅れになるだろうし」
『楽園』にそう言うとドアに近かった数名が部屋から出て行った
「よかったですね。手土産ができましたよ。今回の首謀者ちゃんと引き渡しますから大人しく帰って下さいね」
隣の警官に多少うんざりとしながらそう言うと警官はにこやかに笑って
「いやー、それは有難い。ついでにココに居る奴全員補導したいくらいだけどね」
と言いやがった。その瞬間、この部屋に殺気が充満する
「ミキ、その人誰?」
タキが俺の腕に巻きつきながら聞いてきた
「…警察」
そう言った瞬間、誰かが殴りかかってくる
当然『楽園』ではない奴だ
そいつが警官を殴ろうと突き出す拳を手の平で止める
「ストップ!手、出さないでね?ココで何かしたら、それは交番に連行されても文句言えないけど、わざわざ連れて行かれる理由を与えてやる義理はないよね?」
こちらの思惑が分かっている『楽園』は少し苦い顔をしながら、近くに居る『楽園』じゃない奴らを止めに入っている
「警察の方も煽るような言動は控えて下さいね?じゃないと、社会復帰できないくらい、酷いコトしちゃうかも」
クスッとさも楽しそうだと言わんばかりの表情を作って警官に笑いかけた



← Back    NEXT →

ページ一覧】【一言】【TOP】【HOME

Copyright(C) Shino komanami.All Rights Reserved.