[40]

「なーにが、『社会復帰できないくらい、酷いコトしちゃうかも』だ!俺らに散々心配掛けといて!お前は街から出られないくらい、俺たちに酷いコトされちまうかもよ?」
そう言いながら俺の額を突いてくるのは圭介だった
「えぇー、でもそれはケイが助けてくれるでしょー?ってか、俺も心配したんだからね!タキやケイがココに居るって聞いて」
アズマに彼らもココに居ると聞いてやってきたことを思い出す。
圭介はともかく、タキはそこまで喧嘩ができるわけでもないから大丈夫なのだろうかと心配していたのだ
「あー…それは、心配かけて悪かった、ありがとな」
「本当にね。まぁ、俺がココに連れて来られたのは、アズマが関わっていた以上絶対だったみたいだから、ケイ達のせいじゃないよ」
『楽園』という広い意味では彼らのせいだろうけど、わざわざ圭介に巻き込まれたと言う必要はないだろうと思い、遠まわしに気にするなと言ってみた
「結局はアイツか…」
圭介が嫌そうに顔をゆがめたので、苦笑しながら
「アズマも巻き込まれた一人だから責めないで」
とフォローしておく
「…お姫様、意外と今回のことについて詳しいな」
警官がそう言ったことで、圭介とタキの警戒が再び強くなった
「まぁ、そうですね。今回一番最後に関わったくせに、一番詳しいのは俺だと思いますよ。多分、両方の視点からちゃんと事情説明されたの俺だけでしょうし」
「ふーん…じゃあ、お前一人連れて行けば大体の話はわかるってことか」
「いや、だからその事情説明役には1人生贄を差し出してあげるってさっき言ったじゃないですか」
俺自身が連れて行かれると、それはそれで色々と問題が発生してしまうからそれは避けておきたい
「俺が引き起こした事件じゃないから、俺を連れていくと貴方もただじゃすみませんよー」
「…何が言いたい?」
「そういうルールだってこと。貴方もあの街と関わりのある警官なら知ってるんじゃないですか?あの街のルールは」
「まぁ、知ってはいる。あの奥で起こった事件には介入できないこととかな」
「あれ?その程度なんだ…俺より知ってること少ない?」
あの街のルールは特殊すぎるし、深く関わることのない奴は詳しいことは説明されないところがある
「ミキさん!アズマ達連れてきました!」
『楽園』の誰かが扉のところでそう叫んだ
「ありがとう。ごめんね、折角二人を隔離したところだったのに」
「いえ!それで、二人とも警察に突き出すんですか?」
そう尋ねられ、少しだけ考える
アズマを見ると少しだけ引きつった顔をしていた
「…そうだね…」
どちらにせよ、面倒なことに変わりない
フッと口元に笑みを作りアズマを見る
「アズマ、取引の俺からの条件、今いい?」
そう言うと、アズマは何を言いたいか分かったようで目に見えて落ち込んでいる
その様子にクスクスと軽く笑って
「警察に事情説明ヨロシクネ?だーいじょうぶ。きっと街が助けてくれるからすぐ帰って来れるよ」
「まぁな、分かってたけどな。面倒だなーって思っただけだ」
「そうだね。だからアズマに押し付けたんだけどね。ただ、警察に行って事情説明するくらい、簡単でしょう?」
「あぁ、俺が提示した条件と相応だろうな。俺がお前を巻き込んだようなもんだしな。分かった。行ってくる」
「うん。いってらっしゃい。そういうわけで警官さん、あいつら二人とも連れて行っていいよ。二人とも今回の件の中核とも言えるから一番詳しいだろうしね。よかったねー」
にこにこと警官に笑いかけて警官の背中を押す
「ちょ、ちょっと待て!」
「いや、待てません。ケイ、タキあとはよろしく」
「りょーかい」
「ほら、さっさと行って」
途中で圭介とタキに警官を押し付けて俺は数歩下がる
ふぅ。これで一件落着
「美希也、どういうこと?これ」
…落着していなかった。横に来た楓と高林先生を見てげんなりする
あぁ、何で面倒な時にこの人たちはいるのだろうか
今文句を言っても仕方がないことを考えて少しだけイライラした



← Back    NEXT →

ページ一覧】【一言】【TOP】【HOME

Copyright(C) Shino komanami.All Rights Reserved.