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結局、楓と高林先生も一緒にマスターの店に帰ってきました
マスターが車で迎えに来てくれていたのでココまで楽に帰って来れたけど、移動中の車内は物凄くどんよりとした空気が充満していました
「それで、そいつらは美希也の何なんだ?」
店に帰って早々、コーヒーを入れて今は店のボックス席に座って改めて話をする体制になっています。
因みに、楓と高林先生、俺とマスターで別れて座っています
「あー…うん。説明しないといけないよね。こちら、高里楓君。ドッペル騒動の中心人物で俺の双子のお兄ちゃん。ついで、隣が高林悟先生、俺の通う学校の英語講師」
「俺はこの店のマスターをしている水嶋だ。ドッペルに先生ねぇ…見た感じ、この場所とは縁がなさそうだが、美希也が引き入れたのか?」
「まさか!勝手に入って来ただけ。いくらなんでも一般人を染めるつもりはないよ」
「まぁ、そうだろうな。一応確認しただけだ」
面倒なことになってるなぁとガシガシと頭を掻くマスターに
「あの、あなたは美希也とはどういう関係ですか?友人?知り合い?あと、ココの店のマスターということはこの裏街の住人ですよね?」
そう、矢継ぎ早に質問する楓に更に面倒そうにため息をついて
「まぁ、ざっくり言うとコイツのココでの保護者のようなもんだ」
「…保護者ですか。率直に聞きますが、あなたは美希也がココに来ることを許容しているということですよね?」
「まぁな。ココに来ることは別にコイツなら構わないと考えてる。コイツは何だかんだ言いつつココで生きていけるからな」
「ココで生きていけるとは…?ココは犯罪も許容される街だと聞いています。そんな場所で生きていけるというのはどういうことですか?」
「犯罪が許容される…か。まぁ、あんまり知られてないみたいだが、この街にも一応法律はあるんだぜ?それを知らない奴が勝手に犯罪行為をしたりするけどな。そういう奴はすぐにお仕置きされた上に街から永久追放される」
「法律があるんですか…けれど、知らずに踏み入れた奴の餌食になる可能性だってあるんですよね?」
「勿論ある」
「美希也は…そういう奴らから身を守れるだけ、強いということですか?」
楓が俺を見てそうマスターに聞く
「美希也の力が強いかどうかは俺は知らないが、そういう事態に陥る覚悟をしてココに居ることだけは知っている。だから、ココで生きていけると思っているよ」
「今回のこともその覚悟の範囲だということですか?」
「まぁ、そういうことだな。まぁ、俺に連絡もせずに勝手に色々やってたことに対しては保護者としてちゃんと躾けるべきだと思ってるけどな?美希也」
そう言って話を振られてギクッと体が強張る
「マスター、説教される前に言い訳するけど、今回のは不可抗力だからね。連絡する暇もなかったんだし」
「そろそろ、その説明をしてもらおうか。なかなか帰って来ないわ、ケイとも連絡は取れないわで心配したんだぞ」
そう言われて、そう言えばとあの時の状況を思い出す
確かに、俺も、圭介達も自分たちのことで精いっぱいで他に思考を向けることは難しかった
「あー…うん。ごめん、連絡取れなくて。実はね…」
楓達を外に届けてからアズマに巻き込まれて連れて行かれるまで、細々とした補足説明を入れながらゆっくりと説明をした
楓達が分からないことをちょこちょこ質問してきたから教えられる範囲で答えていたら、説明が終わったころにはもう夜も明けて眩しい太陽の光が店の中に差し込んでいた
結局…俺は少しだけ寝たけど、3人とも徹夜したことになる。
「えっと、そろそろ寝ない?もう朝だし」
そう提案すると
「じゃあ、まだまだ言いたいことはあるが、それは全部起きてからだな」
とマスターに言われた。
説教、今日1日は続きそうです。



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