[44]

暫く圭介と昨日の話などをしているとマスターが起きてきたので会話を中断してマスターにコーヒーをいれるために席を立つ
「そういや、夏休みもあと半分か」
圭介が思い出したようにそう言った
夏休み
長いと思っていたこの休みも思えばあっという間に過ぎている気がする
「あー…そうだね。圭介とどっか遠出したかったけど難しいかな?」
「そうだなー…俺は残りの夏休みは特に予定ないけど、美希也は?」
「俺は…うーん。行きたくないけど、田舎に行かないといけないんだよね」
「美希也の田舎か、先月法事で行ってたところだろ?」
「そうそう」
あの時は法事だったからどうしても帰る必要があった
けれど…
「今回は別に法事ってわけじゃないし、できたら帰りたくないんだよねー…会いたくない人達も居るし」
はぁ…とため息をつきながらコーヒーをカップに注ぐ
「珍しいじゃん。そんなため息をつきたくなるくらい嫌いな人って。元カノとか?」
「全然そんなんじゃないって。喧嘩別れした幼馴染とその他大勢だから」
「なんだよ、それ」なんていう圭介に曖昧に笑い返して強制的にその話はうやむやにする
「まぁ、そういうわけで、2日程田舎に帰らないといけない日はあるんだけど、それ以外は特にないから。あー、とりあえず夏休み期間中にケーキを完璧にして昼の客を獲得するというミッションはあるけど、それくらいかな」
はい、とマスターの前にコーヒーを置きながらそう言うと
「まぁ、誰かに食べさせられるような代物になるといいな」
と笑われた
「それなりのモノを作れてるつもりなんですけどねぇ」
そんな言い方されると、何としてもこの夏の間にスイーツをマスターしてやろうという気になってくる
「夏休み中にスイーツは完ぺきにしてやる!」
「それじゃあ、俺と遠出は無理だろうな」
「あ」
今気づいた俺に圭介はバカだなぁとでも言いたげな表情を浮かべて
「それじゃあ、仕方ないな。まぁ、いつでも行こうと思えばどこにでも行けるんだし、夏休みはスイーツに費やしても良いんじゃないか?俺はプールかどっか遊びに行くから」
「は?俺置いてくの?それちょっと酷くない?」
「お前は俺よりスイーツがいいんだろ?」
「そんなわけないだろ!いつ俺がお前よりスイーツが大事だと言った!」
ヒートアップしていく
しかし、内容は非常にくだらない
そして、もうすでに自分が何を言ってるのか分からない状態になっている
「おい、美希也。お前矛盾しまくりだぞ。お前はこの夏はスイーツに費やすんだろ?だったら圭介は解放してやれよ」
「マスターまで何それ?!」
「美希也は俺と遊びたいの?それとも、スイーツを完璧にしたいの?どっち?」
さぁ、選べと二択だと言わんばかりに2本だけ指を立てて軽く振る
「むぅ…両方。圭介とも遊ぶし、スイーツも完ぺきにしてやる!チッ、やってやろうじゃないか!まだあと半分も夏休みはあるんだからな!」
「おー、じゃあ、頑張れ」
無理だと思うけどとは言わずに圭介とマスターがけらけらと笑う
その様子が気に入らなくて更にむくれたのは言うまでもなかった



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